べらと、ゆかいでちょっぴりざんねんな仲間たち

 きょうは、クマハチの紹介です。
 クマハチはすらりとしたイケメンの白クマなのですが、かれにも問題がひとつ。それは自分がシロクマではなくて、「ハチ」だと思いたいのです。だから、いつもハチのかっこうをしてます。

 クマハチの初恋の相手は、花畑で会ったミツバチのエンジェルちゃんでした。
 バチは幸せな春を運んでくるすばらしい昆虫です。
 ハチは美しい花畑にやってきて、花から花へと花粉を運びます。花粉がなければ、植物は実をつけることができません。
 ハチってなんてすごいんだろう、とクマハチは感動しました。
 その中でも、すき通ったはねをふるわせて、だれよりも美しく飛ぶのが、ハチのエンジェルちゃんでした。

「エンジェルちゃん、遊びましょ」
「いそがしいから、ちょっとだけよ」
 エンジェルちゃんは時々、ブンブンブーンとちょっとだけ耳のところでおどってくれました。
「わたし、おしごとがあるから、もう行かなくっちゃ」
「ぼくも行ってもいい?おしごとを手伝うから」
「それはだめよ」
 エンジェルは悲しい顔をしました。
「あなたはしんせつな白クマさんだけど、ざんねんながらハチじゃないもの。手伝うことはできないわ」
 そう言って、ハチのエンジェルはいなくなりました。

 ブ―ンという音が消えたら、世界がとてもさみしく見えました。
 エンジェルちゃんに、どこに行ったのかな。
 どこに行ったら会えるのだろうか。
 自分がハチになったら、ハチの仲間にいれてもらえて、またエンジェルちゃんに会えるかもしれない。白クマはそう考えて、ハチのかっこうをするようになったのです。

 シロクマがべらの家でくらし始めたとき、トットにいじめられることがありました。トットはずけずけというタイプなのです。あたまに浮かんだことをストレートに言っているだけで、相手がそれほどパンチを受けているとは思ってはいません。こういう人って、いますよね。でも、言われたほうは、傷ついちゃいます。

「おまえはシロクマなのに、そんなハチのふくなんかきて、はずかしいと思わないのか」
「ぼくはハチです」
「おまえはシロクマだ」
「ぼくはハチです」
 シロクマは涙ぐんでもゆずりません。がんばれ。
 
 そんなある夜、ふたりがこう思いました。
「そうだ、べらちゃんの意見《いけん》をきこう」
 その時、べらはツアーガイドのお仕事から「極限《きょくげん》」と叫《さけ》んで帰《かえ》ったばかりでした。極限というのは、ひどく腹ペコだというべら語です。ふたりがキッチンに行くと、べらはテーブルで、ミートソースのスパゲッティをおいしそうに食べていました。
「ためしてガッテンはすごいわ。1分でヌードルがゆであがるのよ。ノーベル賞《しょう》」
 と上きげんでした。
 ノーベル賞というのはとてもおいしいということ。べらの顔にトマトソースがついていました。
「やり方、知りたい?まずね、ヌードルを水につけておくの」
 ふたりとも、スパゲッティのゆで方にはきょうみがありません。そんなのんびりしている場合《ばあい》ではないのです。それにしても、トマトソースが飛《と》びちったべらの顔はかわいいけれど、ちょっとまぬけでした。
 ふたりはこの大問題《だいもんだい》を、べらちゃんが解決《かいけつ》できるのかなと思いました。

「トラブルって、なぁに」
「シロクマは、シロクマ以外《いがい》のナニモノでもない。ハチではない」
「ノー、ぼくはハチです」
  ?
 べらの口にはスパゲッティがはいっていてもぐもぐもぐもぐ、目だけ大きくしています。

「ああ、そんなこと」
 べらはまたスパゲッティをつるつる。そして、言いました。
「He is a bear, who wants to be a bee. Any problem? 」
 その意味は、「かれはハチになりたがっているクマよ。そのどこがもんだい?」

 その時、[ああ、そうなんだ。そうだった」
 とトットがとつぜん、納得《なっとく》しました。
 部屋《へや》にあった風船《ふうせん》が大きくふくらみすぎて、スペースがなくなっていたのに、それがパチンと割《わ》れて楽《らく》になった、そんな感じです。
「そうなんだ。ハチになりたいシロクマなんだ」
 トットがそう言った時、シロクマがうぉーっと、うち中にひびく大声《おおごえ》で泣《な》き出しました。これまでは泣きそうになってもこらえていたのですが、ようやくわかってもらたと思ったら、泣いてしまいました。
 シロクマが肩《かた》をふるわせて泣くのを見て、トットはこんなにまで傷《きず》つけることを言ってきたのだと気がついて、身体《からだ》が冷《つめ》たくなりました。自分だって泳《およ》げないとばかにされてくやしい思いをしてきたのに、相手に同じようなことをしてしまいました。
「ごめん」
 とトットが言いました。

「自分が言われたくないと思うことは、言わないでね」
 とべらがトットに言いました。そして、シロクマのほうを向いて、ガッツポーズをしました。
「強くなるしかないんじゃない?」

「以上《いじょう》。では、そういうことで」
 とべらが言って、みんなでにこにこしました。
 その日から、シロクマ名前が「クマハチ」になったのです。

「ありがとう」
 クマハチが、ナプキンでべらの顔のトマトソースを拭いて、チュッとありがとうのキスをしたら、トットがぱちぱちと拍手《はくしゅ》をしました。
 なぜ拍手《はくしゅ》までしてもりあがったのかわかりませんが、そんな時って、ありますよね。
 その時、ふたりはこう思ったのです。
 べらちゃんはおっちょこちょいが多いけれど、頭《あたま》と心は見かけよりずうっとよい人みたいだ。ぼくたちはよい家に住みついたね、って。