それから、3日後、べらのもとにマリンから手紙が届きました。
「べらちゃん、この間はすみませんでした。ぼくがどうしてべらちゃんの前にあらわれたのか、ふしぎに思っていると思いますが、ぼくは変たいではありません。
ぼくはあるりゆうから、マリンヘッドランドのスラッカーヒルにひとりで住んでいました。その丘に、べらちゃんが時々、やって来て、ランチを食べたり、おひるねをしました。ぼくはべらちゃんが来てくれるのをいつもまっていました。ぼくには友だちがいないので、その日がいちばんの楽しみでした。
ある日、べらちゃんがおひるねをしている時、きゅうに雨になりました。ぼくはおなかの上を走ったりして起こしたけれど、なかなか起きてくれません。ようやく気がついて走ってかえりましたが、ぼくはべらちゃんがかぜをひいたのではないかととてもしんぱいでした。
それからべらちゃんが来てくれないので、べらちゃんはびょう気になってにゅういんしているのかな。もう死んでしまったのかなとわるいほうにばかり考えてしまいました。そして、心配でたまらなくなって、サンフランシスコに来たのです。
ビッグ・シティはにおいの倉庫といわれているので、とちゅうで気をうしなったらいのちがないと思いましたが、ぼくはどうしても来たかったです。
でも、べらちゃんが元気で、なかまたちとくらしているのを見て、ぼくはとても安心しました。うれしいです。へんなあいさつをしてしまって、すみませんでした。
ぼくはこれから、マリンヘッドランズに帰ります。来る時に、ゴールデンゲート・ブリッジの手すりから落ちるというアクシデントがあったので、あのはしはこわいですが、あそこがぼくの住むところだと思います。
はじめに、あるりゆうとかきましたが、ぼくはストレスを感じるとくさいシャワーを出し、みんなにめいわくをかけ、じぶんも気をうしなってしまうよわいからだなのです。いつかあそこの丘で、またべらちゃんに会えたらいいなと思います。
おげん気でいてください。さようなら。 マリンより」
べらは、マリンが何かを言った時には何が言いたいのか、さっぱりわからなかったけれど、手紙を読んでわかりました。そして、心を打たれました。
マリンくんは、わたしのことを心配して、わざわざ危険な思いをしてまで、会いに来てくれたんだわ。べらは頭を深く下げて、しばらく手紙をむねにだいて立っていました。そして、自分の部屋に引きこもりました。
みんなはべらのことが気がかりですが、気にしていないふりをしていつものことをしていましたが、耳だけはしっかりとべらの部屋に集中させていました。途中で、戸だなをがたがたとあける音、何かをさがしている音がしました。
べらがドアをあけて出てきて、「ぜんいん、集合」と言いました。
なんだろうとみんながぞろぞろ集まりました。
「みなさん、あるだけのイエロー・ファブリックもってきて」
イエロー・ファブリックとは黄色い布のことです。
「このままマリンをかえすわけにはいかないわ。わたしのために、マリンヘッドランズから命がけで、やってきてくれたのよ。サンキュー・パーティもしないで、どうしてこのままかえせるというの」
「それはわかるけど、どうしてイエロー・ファブリックなんだい」
とトットがききました。
「日本人のママの好きだった高倉健《たかくらけん》というスターの映画を思い出したの。映画では、健さんが悪いことをしてジェイル(けいむしょ)にはいっているのね。そこを出ることになるんだけど、おくさんがゆるしてくれているかどうかわからないでしょ。おくさんは思うのよ、家の前にイエローのハンカチーフがつるしてあってひらひらゆれていたら、ウェルカムということだってわかるって」
べらは得意そうです。
「イエロー・ファブリックは、ウェルカムという意味よ。よいアイデアでしょ?」
「でも」
とトットが首をかしげました。
「黄色がウェルカムだって、どうしてマリンにわかるんだい?黄色は一時ストップだから、ぼくなら、うちにきてはだめと思うよ」
「ああ、それはたいへん。 それじゃ、みんなさん、なにかよいアイデアを考えて」
「はい」
とライオンのモッヒが手を上げました。
「ウェルカムというポスターをかけばいいんじゃないっすか」
「モッヒは頭いいっねっ」
モッヒはべらにほめられて、てれました。自分のみじかいヘアを指にまいて、引っぱりました。
それで、みんなで「ウェルカム・マリン」のポスターをかいて、庭に板を立ててポスターをはり、そのよこに、たくさんの黄色い布をせんたくものみたいにつるしました。黄色い布が、かぜにひらひらしています。
「ぶんぶんぶん、ハチが飛ぶ」
黄色が大好きなシロクマのクマハチが、うれしそうに歌っています。
べらはどこへでも飛んでいけるてんとう虫にお願いして、マリンをさがしてもらいました。このてんとう虫は「おしん」という名前で、べらの師匠みたいなおばあさん虫です。
空に黄色い布がぱたぱたぱたぱたとはためく中、おしんに案内されて、マリンが家にやってきました。
「ウェルカム・マリン」というポスターとひらひらしている黄色い布見て、
「ぼくのためでちゅか?」
とすごくおどろいています。
「来てくれるのを、まっていたのよ」
べらが手を広げて、「ハグ」と言いました。
ええっ。
ハグって、だきつくってことでしょ。
そんなこと、したことない。できるかな、とマリンはためらいました。
「ぼく、くちゃいので、ちゅみません」
「へいきへいき、くさいガスの1発や2発、わたし達にはなんでもないことよ」
べらがそう言って、スカートのポケットから何かを取り出しました。
「でも、マリンは特別ににおいによわいから、これ」
と手作りのマスクをくれました。マリンはさっそく白いマスクをかけてみました。
「どう?」
「いいでちゅ。ありがとう」
うれしすぎて涙がでてきました。
べらはマリンをリビングに案内しました。たくさんのごちそうが用意されていました。
「これ、ぼくのために?」
マリンはまた泣きそうになりました。
「こんなの、あたり前。足りないわ。わたしのことをあんなに思ってくれたなんて、どうやってお礼をすればいいの?」
「お礼なんて、いりません。ぼくがしたくて、したのでちゅから」
「ねっ、ここでしばらくいっしょに住まない?帰りたい時には、わたしがいつでもつれていってあげるから」
「でも、ぼくにはにおいのもんだいが。みなさんに被害がおよびまちゅ」
「ノープロブレム。これからは、わたしがいっしょに、においスプレーが出ないように、練習してあげますから」
「はい」
マリンはなんだかよくわからないけど、その気になりました。
マリンは、できれば、毎日べらといっしょにいたいと思っていたのです。
夢がとつぜんかなってうれしすぎて、マリンは1発やりそうになりました。
「失礼しまちゅ」
マリンが急いで立ち去ろうとすると、
「かまわないって」
とべらがしっぽをつかみました。
「ここでは、においはへいきなのよ」
かまわないって、においはへいきってどういう意味?
マリンはふしぎです。
べらがひとさし指を上げると、みんなはリハーサルをした時のように、それぞれ持ちばにつきました。家には何台ものパワフルなエアー・クリーナーが取りつけられていて、いっせいにスイッチオンです。
「マリンくん、このうちではね、においのことなんか、気にしなくていいの。ここでは、だいじょうぶなのよ」
というわけで。マリンはその日から、べらの家に住むことになったのです。
「べらちゃん、この間はすみませんでした。ぼくがどうしてべらちゃんの前にあらわれたのか、ふしぎに思っていると思いますが、ぼくは変たいではありません。
ぼくはあるりゆうから、マリンヘッドランドのスラッカーヒルにひとりで住んでいました。その丘に、べらちゃんが時々、やって来て、ランチを食べたり、おひるねをしました。ぼくはべらちゃんが来てくれるのをいつもまっていました。ぼくには友だちがいないので、その日がいちばんの楽しみでした。
ある日、べらちゃんがおひるねをしている時、きゅうに雨になりました。ぼくはおなかの上を走ったりして起こしたけれど、なかなか起きてくれません。ようやく気がついて走ってかえりましたが、ぼくはべらちゃんがかぜをひいたのではないかととてもしんぱいでした。
それからべらちゃんが来てくれないので、べらちゃんはびょう気になってにゅういんしているのかな。もう死んでしまったのかなとわるいほうにばかり考えてしまいました。そして、心配でたまらなくなって、サンフランシスコに来たのです。
ビッグ・シティはにおいの倉庫といわれているので、とちゅうで気をうしなったらいのちがないと思いましたが、ぼくはどうしても来たかったです。
でも、べらちゃんが元気で、なかまたちとくらしているのを見て、ぼくはとても安心しました。うれしいです。へんなあいさつをしてしまって、すみませんでした。
ぼくはこれから、マリンヘッドランズに帰ります。来る時に、ゴールデンゲート・ブリッジの手すりから落ちるというアクシデントがあったので、あのはしはこわいですが、あそこがぼくの住むところだと思います。
はじめに、あるりゆうとかきましたが、ぼくはストレスを感じるとくさいシャワーを出し、みんなにめいわくをかけ、じぶんも気をうしなってしまうよわいからだなのです。いつかあそこの丘で、またべらちゃんに会えたらいいなと思います。
おげん気でいてください。さようなら。 マリンより」
べらは、マリンが何かを言った時には何が言いたいのか、さっぱりわからなかったけれど、手紙を読んでわかりました。そして、心を打たれました。
マリンくんは、わたしのことを心配して、わざわざ危険な思いをしてまで、会いに来てくれたんだわ。べらは頭を深く下げて、しばらく手紙をむねにだいて立っていました。そして、自分の部屋に引きこもりました。
みんなはべらのことが気がかりですが、気にしていないふりをしていつものことをしていましたが、耳だけはしっかりとべらの部屋に集中させていました。途中で、戸だなをがたがたとあける音、何かをさがしている音がしました。
べらがドアをあけて出てきて、「ぜんいん、集合」と言いました。
なんだろうとみんながぞろぞろ集まりました。
「みなさん、あるだけのイエロー・ファブリックもってきて」
イエロー・ファブリックとは黄色い布のことです。
「このままマリンをかえすわけにはいかないわ。わたしのために、マリンヘッドランズから命がけで、やってきてくれたのよ。サンキュー・パーティもしないで、どうしてこのままかえせるというの」
「それはわかるけど、どうしてイエロー・ファブリックなんだい」
とトットがききました。
「日本人のママの好きだった高倉健《たかくらけん》というスターの映画を思い出したの。映画では、健さんが悪いことをしてジェイル(けいむしょ)にはいっているのね。そこを出ることになるんだけど、おくさんがゆるしてくれているかどうかわからないでしょ。おくさんは思うのよ、家の前にイエローのハンカチーフがつるしてあってひらひらゆれていたら、ウェルカムということだってわかるって」
べらは得意そうです。
「イエロー・ファブリックは、ウェルカムという意味よ。よいアイデアでしょ?」
「でも」
とトットが首をかしげました。
「黄色がウェルカムだって、どうしてマリンにわかるんだい?黄色は一時ストップだから、ぼくなら、うちにきてはだめと思うよ」
「ああ、それはたいへん。 それじゃ、みんなさん、なにかよいアイデアを考えて」
「はい」
とライオンのモッヒが手を上げました。
「ウェルカムというポスターをかけばいいんじゃないっすか」
「モッヒは頭いいっねっ」
モッヒはべらにほめられて、てれました。自分のみじかいヘアを指にまいて、引っぱりました。
それで、みんなで「ウェルカム・マリン」のポスターをかいて、庭に板を立ててポスターをはり、そのよこに、たくさんの黄色い布をせんたくものみたいにつるしました。黄色い布が、かぜにひらひらしています。
「ぶんぶんぶん、ハチが飛ぶ」
黄色が大好きなシロクマのクマハチが、うれしそうに歌っています。
べらはどこへでも飛んでいけるてんとう虫にお願いして、マリンをさがしてもらいました。このてんとう虫は「おしん」という名前で、べらの師匠みたいなおばあさん虫です。
空に黄色い布がぱたぱたぱたぱたとはためく中、おしんに案内されて、マリンが家にやってきました。
「ウェルカム・マリン」というポスターとひらひらしている黄色い布見て、
「ぼくのためでちゅか?」
とすごくおどろいています。
「来てくれるのを、まっていたのよ」
べらが手を広げて、「ハグ」と言いました。
ええっ。
ハグって、だきつくってことでしょ。
そんなこと、したことない。できるかな、とマリンはためらいました。
「ぼく、くちゃいので、ちゅみません」
「へいきへいき、くさいガスの1発や2発、わたし達にはなんでもないことよ」
べらがそう言って、スカートのポケットから何かを取り出しました。
「でも、マリンは特別ににおいによわいから、これ」
と手作りのマスクをくれました。マリンはさっそく白いマスクをかけてみました。
「どう?」
「いいでちゅ。ありがとう」
うれしすぎて涙がでてきました。
べらはマリンをリビングに案内しました。たくさんのごちそうが用意されていました。
「これ、ぼくのために?」
マリンはまた泣きそうになりました。
「こんなの、あたり前。足りないわ。わたしのことをあんなに思ってくれたなんて、どうやってお礼をすればいいの?」
「お礼なんて、いりません。ぼくがしたくて、したのでちゅから」
「ねっ、ここでしばらくいっしょに住まない?帰りたい時には、わたしがいつでもつれていってあげるから」
「でも、ぼくにはにおいのもんだいが。みなさんに被害がおよびまちゅ」
「ノープロブレム。これからは、わたしがいっしょに、においスプレーが出ないように、練習してあげますから」
「はい」
マリンはなんだかよくわからないけど、その気になりました。
マリンは、できれば、毎日べらといっしょにいたいと思っていたのです。
夢がとつぜんかなってうれしすぎて、マリンは1発やりそうになりました。
「失礼しまちゅ」
マリンが急いで立ち去ろうとすると、
「かまわないって」
とべらがしっぽをつかみました。
「ここでは、においはへいきなのよ」
かまわないって、においはへいきってどういう意味?
マリンはふしぎです。
べらがひとさし指を上げると、みんなはリハーサルをした時のように、それぞれ持ちばにつきました。家には何台ものパワフルなエアー・クリーナーが取りつけられていて、いっせいにスイッチオンです。
「マリンくん、このうちではね、においのことなんか、気にしなくていいの。ここでは、だいじょうぶなのよ」
というわけで。マリンはその日から、べらの家に住むことになったのです。

