船が着いた場所は、フェリービルディングというところです。
フェリービルディングの前が、マーケット・ストリートという通りです。
そこには古いストリートカー(路線電車)が走っています。いろんな国で使われていたアンティークの電車で、サンフランシスコ名物です。
そのストリートカーはダウンタウンの真ん中を走ります。
マリンはそのマーケット・ストリートで、37個のニオイを感じました。空気の中には、人、食べ物、車、香水などいろんなにおいがただよっています。
神経を集中させて、たくさんのにおいの中から、あの子の匂いを見つけました。
あの子のラベンダーのにおいです。やった! マリンは喜びました。
あの子は生きている!
このにおいを追いかけていけば、会える。
マリンはラベンダーのにおいをひろいながら、ダウンタウンを走り、カストロという通りを抜けました。カストロ通りでは、はだかのお兄さんが歩いていました。人間にも、服を着ない人がいるのだと思いました。
途中で霧が出てきて、においが消えてしまい、ゴールデンゲート公園というところまで来てうろうろしているうちに暗くなってきたので、カエルの声がするリリー・ポンドという池のそばで寝ることにしました。
すると「ぐわっ」、はきそうになりました。ものすごくくさいので、この新種のにおいはなにかと調べてみると、近くにホームレスのおじさんが、ダンボールをかぶって寝ていました。人間には、スカンクよりもくさい人がいることを知りました。マリンはいそいで逃げ出して、白いおしろのような温室の前の広い花畑の中で、ねることにしました。
朝になって、またあの子のにおいを見つけ、それを追いかけてフォーレストヒルというところにまできました。フォーレストは森、ヒルは丘という意味です。
フォーレストヒルというところは緑が多く、きれいな家がならんでいますが、あちこちに坂があり、いりくんでいます。
ここには、あの子のにおいが、ありました。
そうです。あの子が住んでいるのはここです。
そのにおいがするのは、童話みたいなかわらの屋根、壁がみどり色のかわいい家からでした。
前庭にむらさき色のラベンダーがうえられていて、それであの子からはそのよいかおりがするのだとわかりました。
マリンはその家の前に立ちました。
ぼくは、とうとう、ここまで来れたんだ!
人生、初くらいのうれしさです。
マリンは胸がつまって、泣きそうになりました。
マリンはドアベルを押しました。
「ごめんくだちゃい」
マリンは深呼吸をしました。くさいシャワーが出てしまうと困るからです。まず出てきたのは小さな毛の薄いライオンでした。
えっ。
続いて、オットセイが顔を見せました。
ええっ。
この子は、ふしぎな生きものたちと住んでいるみたいです。
なぜ?
マリンは自分が動物なのを忘れてそう思いました。
「何のようじだ。おまえはれだ」
とライオンが言いました。
「ぼくはマリンといいまちゅ。ここに、若い人間の女の子がいまちゅか」
マリンはしゃべる時、スカンクの子供の特徴で、「す」を「ちゅ」と言います。それを聞いて、オットセイがくすっと笑いました。
「いるけど。べらちゃーん、お客さんだよ」
あの子は「べら」という名前なんだ、とその時わかりました。あの子にぴったりのかわいい名前です。
「はーい」
中から、女の子が出てきました。
あっ、あの会いたかった子が、目の前にやってきたのです。
どきん、どきん。
「はい。わたしがべらよ」
マリンはうれしすぎて、ことばが出てきません。
「どうかしましたか」
べらがマリンの顔をのぞきこみました。
「あのう」
マリンの声がふるえてしまいました。
「どうして、来ないんでちゅか」
「えっ」
べらはきょとんとしました。さっぱり意味がわかりません。
「どうしてマリンヘッドランズに、来ないんでちゅか」
「えっ」
「前は来ていたのに、どうしてもう来ないんでちゅか」
その時、マリンはもうがまんがでなきなくて、くさいシャワーが出そうになりました。
「失礼しまちゅ」
マリンはにげました。
シャワーが出るのをがまんして走って行くと、ゴールデンゲートハイツという公園が見えたので、そこまで走って行って1発、2発やりました。
あまりのくささに、公園にいた犬達が、オーナーをおいて、きゃんきゃんといって、にげていきました。
マリンはにおいをかがないように、その公園からにげて、今度はもっと高い所にあるグランドビュー公園というところに行きました。
長い階段をのぼると、てっぺんはせまく、人はだれもいません。そこには、パノラマビューが広がりっていました。360度、サンフランシスコが見えます。 丘には強い風が吹いていて、飛ばされそうです。
ここならだいじょうぶ。においも飛んでいくから。
マリンは真ん中にひとつある古ぼけた緑色のベンチのあしにしがみついて、何発もやりました。
その日、フォーレストヒルの人たちから、変なにおいがするというクレームがPGアンドEというガスの会社にいくつもきました。それで、会社から調査の人がやってきて、ガスもれを探しました。でも、どの家のガス管も、もれていませんでした。
フェリービルディングの前が、マーケット・ストリートという通りです。
そこには古いストリートカー(路線電車)が走っています。いろんな国で使われていたアンティークの電車で、サンフランシスコ名物です。
そのストリートカーはダウンタウンの真ん中を走ります。
マリンはそのマーケット・ストリートで、37個のニオイを感じました。空気の中には、人、食べ物、車、香水などいろんなにおいがただよっています。
神経を集中させて、たくさんのにおいの中から、あの子の匂いを見つけました。
あの子のラベンダーのにおいです。やった! マリンは喜びました。
あの子は生きている!
このにおいを追いかけていけば、会える。
マリンはラベンダーのにおいをひろいながら、ダウンタウンを走り、カストロという通りを抜けました。カストロ通りでは、はだかのお兄さんが歩いていました。人間にも、服を着ない人がいるのだと思いました。
途中で霧が出てきて、においが消えてしまい、ゴールデンゲート公園というところまで来てうろうろしているうちに暗くなってきたので、カエルの声がするリリー・ポンドという池のそばで寝ることにしました。
すると「ぐわっ」、はきそうになりました。ものすごくくさいので、この新種のにおいはなにかと調べてみると、近くにホームレスのおじさんが、ダンボールをかぶって寝ていました。人間には、スカンクよりもくさい人がいることを知りました。マリンはいそいで逃げ出して、白いおしろのような温室の前の広い花畑の中で、ねることにしました。
朝になって、またあの子のにおいを見つけ、それを追いかけてフォーレストヒルというところにまできました。フォーレストは森、ヒルは丘という意味です。
フォーレストヒルというところは緑が多く、きれいな家がならんでいますが、あちこちに坂があり、いりくんでいます。
ここには、あの子のにおいが、ありました。
そうです。あの子が住んでいるのはここです。
そのにおいがするのは、童話みたいなかわらの屋根、壁がみどり色のかわいい家からでした。
前庭にむらさき色のラベンダーがうえられていて、それであの子からはそのよいかおりがするのだとわかりました。
マリンはその家の前に立ちました。
ぼくは、とうとう、ここまで来れたんだ!
人生、初くらいのうれしさです。
マリンは胸がつまって、泣きそうになりました。
マリンはドアベルを押しました。
「ごめんくだちゃい」
マリンは深呼吸をしました。くさいシャワーが出てしまうと困るからです。まず出てきたのは小さな毛の薄いライオンでした。
えっ。
続いて、オットセイが顔を見せました。
ええっ。
この子は、ふしぎな生きものたちと住んでいるみたいです。
なぜ?
マリンは自分が動物なのを忘れてそう思いました。
「何のようじだ。おまえはれだ」
とライオンが言いました。
「ぼくはマリンといいまちゅ。ここに、若い人間の女の子がいまちゅか」
マリンはしゃべる時、スカンクの子供の特徴で、「す」を「ちゅ」と言います。それを聞いて、オットセイがくすっと笑いました。
「いるけど。べらちゃーん、お客さんだよ」
あの子は「べら」という名前なんだ、とその時わかりました。あの子にぴったりのかわいい名前です。
「はーい」
中から、女の子が出てきました。
あっ、あの会いたかった子が、目の前にやってきたのです。
どきん、どきん。
「はい。わたしがべらよ」
マリンはうれしすぎて、ことばが出てきません。
「どうかしましたか」
べらがマリンの顔をのぞきこみました。
「あのう」
マリンの声がふるえてしまいました。
「どうして、来ないんでちゅか」
「えっ」
べらはきょとんとしました。さっぱり意味がわかりません。
「どうしてマリンヘッドランズに、来ないんでちゅか」
「えっ」
「前は来ていたのに、どうしてもう来ないんでちゅか」
その時、マリンはもうがまんがでなきなくて、くさいシャワーが出そうになりました。
「失礼しまちゅ」
マリンはにげました。
シャワーが出るのをがまんして走って行くと、ゴールデンゲートハイツという公園が見えたので、そこまで走って行って1発、2発やりました。
あまりのくささに、公園にいた犬達が、オーナーをおいて、きゃんきゃんといって、にげていきました。
マリンはにおいをかがないように、その公園からにげて、今度はもっと高い所にあるグランドビュー公園というところに行きました。
長い階段をのぼると、てっぺんはせまく、人はだれもいません。そこには、パノラマビューが広がりっていました。360度、サンフランシスコが見えます。 丘には強い風が吹いていて、飛ばされそうです。
ここならだいじょうぶ。においも飛んでいくから。
マリンは真ん中にひとつある古ぼけた緑色のベンチのあしにしがみついて、何発もやりました。
その日、フォーレストヒルの人たちから、変なにおいがするというクレームがPGアンドEというガスの会社にいくつもきました。それで、会社から調査の人がやってきて、ガスもれを探しました。でも、どの家のガス管も、もれていませんでした。

