べらと、ゆかいでちょっぴりざんねんな仲間たち

べらの部屋にはたくさんのドレスが届けられました。どれもハリウッドのスターが着るようなロングドレスなので、ちょっと困りました。どれを晩さん会に着ていけばよいのでしょうか。べらは大きな鏡を見ながら、ファッションショーをしています。

 ドレスやくつを決めなければならないのは、今度も、人間のべらだけです。
 べらはヒールをはいて、歩いてみました。べらはスニーカーとブーツしかはいたみとがないのです。こんな高いヒールをはいて歩くなんて、つなわたりよりむずしいわ。どうして、こんな不自由なくつをはく必要があるの、とべらは不満です。
 
 王宮の庭には大きなふん水があるので、トットはそこでおよぐ練習をしています。そこには美しい花壇があちこちにあり、かわいいハチさんがいっぱいいるので、クマハチはハッピーです。モッヒは木の上にいます。それは、この庭にはドーベルマンという犬が3匹もいるからです。
 マリンもスカンクの仲間がいるかなとさがしていた時、そのドーベルマンに追いかけられてたので、べらの部屋に逃げこんで、今は大きな椅子の下にかくれています。
「マリンくん、これどう?」
 とべらがドレスを見せると、マリンが椅子の下から、ちょこんと顔だけ出しました。
「ぼく、そういうの、わかんないでちゅ」
 マリンはまだおそろしがっていて、スプレーをださないことに必死なので、ドレスどころではありません。
   
「べらちゃん、ドレスは決まった?」
 ゴーちゃんが元気にはいってきました。さすが、宮廷にはなれているという感じです。
「来てくれて、うれしいわ。どれもすてきだけど、どのドレスがよいのか、決められないの」
「べらちゃんが、すぐに決められないなんて、めずらしいね」
「こういう場所は、苦手よ。晩さん会なんて、はじめてだし」
「だいじょうぶ。ぼくが手伝うよ」
「ありがとう。ゴーちゃんなら、どれにする?」
「そうだね、これがいいよ」
 とブルーのドレスをえらびました。

「デミアンがべらちゃんのことばかりきいてくるんだよ。だから、サンフランシスコにはボーイフレンドが10人いて、お花が毎日とどくっておしえたんだ」
「ボーイフレンドはいないし、お花だってとどかないわよ」
「今にとどくよ」
 ゴーちゃんがくくくと笑いました。
「デミアンはべらちゃんがすきみたいだよ。」
「どうして?」
「すきになるのに、りゆうはいらないんだよ」
 ゴーちゃんは、また大人《おとな》びたことを言いました。

「ゴーちゃんは、なぜそんなむずかしいことを知っているの?希望《きぼう》は風船《ふうせん》と言った人はだれ?思い出せた?」
「うん。ゴーストワールドで、そう言っていたお兄ちゃんがいたんだ」
「ゴーストトワールドのことを思い出したの?」
「うん。だんだん思い出してきたよ」
「思いだしたこと、何でもいいから教《おし》えてくれる?」

「ぼくはゴーストワールドに行って、まいにち、ママに会いたいってわんわん泣いていたんだ。そしたら、地球《ちきゅう》に行く方法《ほうほう》をおしえてくれるお兄ちゃんがいたんだ。ハロウィーンに地球に行《い》けばいいって。そして、べらちゃんをたずねていけば、助《たす》けてくれるって」
「わたしを?わたしのこと、ほかに何か言っていた?」
「うん」
「おしえて」
「さかだちがうまいって」
「もっとほかにない?」
「あるよ」
「おしえて」
「水をのみながら、さかだちができるって」
「ほかには」
「オリンピックのしゅもくにさかだちがあったら、金メダルだって」
「そんなことかぁ」

「その人って、だれかわかる?」
「えーとね、ノベンバー・リードっていうんだよ」
 ああっ。
 べらはもう少しで、心臓がとび出るところでした。
「その人が、あのピアノのもちぬしよ」
「べらちゃんが好きだった人かい」
「そう。大学のせんぱいたった人」
「音楽のアプリを作ったんでしょ」
「そう。その人」

「でも、ノベンバーは、どうしてわたしに会いにきてくれないのかしら。ゴーちゃんは来れたのに」
 べらが少しはずかしそうに言いました。ノベンバーは、わたしがどのくらい会いたがっているのか、知っているのかしら。 

「新会長にえらばれちゃったから、ものすごく忙しいんだよ」
 ああ。それはノベンバーらしいとべらは思いました。いつも、だれかのお世話ばかりしている人でした。
「お兄ちゃんは、そのさかだち金メダルの人に会いたいから、地球への行き方を研究していたんだよ」
 そうなの?
 べらは心が、バラの花園みたいになりました。

 その時、デミアンがはいってきました。ブルーのネクタイをして、大きな花束をだいています。ゴーちゃんがほらね、とべらをつつきました。
「晩さん会までには少し時間がありますから、国王から庭をあんないしてさしあげなさいと言われましたので、やってきました。いかがでしょうか」
 デミアンが少しおどおどしています。
「お兄ちゃん、ほんとうにパパがいったのかい」
 とゴーちゃんがからかいました。
「お兄ちゃんが、べらちゃんと歩きたいんではないのかい」
「そ、それは」
 デミアンが耳まで真っ赤になりました。
「ゴードン、ママが呼んでいるよ」
「わかったよ。ふたりで歩くチャンスをあげるから、チャンスはものにしろよ」
 
 王宮の庭は広すぎるので、デミアンがゴルフカートのような車を運転しました。ここって、ゴールデンゲート公園より広いのかしらね。
 途中で、デミアンが車を止めました。目が一点を見つめています。
 どうしたのかな、と思ったら、彼は車からおりて、林のはしにある小石のところに近づいていきました。
 デミアンが困った顔をしたので、べらが車をおりてきました。
「小鳥がたおれているのです。息をしていません」
 小鳥は3センチほどで、黒いワラのように見えます。

 べらが近づいて腰をかがめ、小さな声で言いました。
「これ、生まれたばかりの子どもの鳥です。気を失っているだけかもしれませんよ。わたし、経験ありますから」
 べらの家の窓に鳥がぶつかって、気絶していたことが2回ありました。その時は水を近くにおいて、そっとしておいたら、飛び立ちました。
 デミアンが小皿に水を運んできて、そばにおきました。
 そして、庭めぐりを続けたのですが、ふたりの気もちはすぐに子鳥のところにもどりました。

 デミアンはべらがゴーストの弟の面倒をみてくれたこと。たくさんの生きもののと住んでいることはすばらしい。心を打たれましたと言ってくれました。
「ぼくはこの国の動物愛護委員会の会長をしています。それから、歩く会の会長もしています。べらさんは、ハイキングがお好きなのですよね」
「はい」
「今度、いっしょにハイキングに出かけませんか。この国にも、世界にほこれる美しい山や湖がありますよ」