べらと、ゆかいでちょっぴりざんねんな仲間たち

 べらはゴーちゃんにきいてみました。
「前に、プリンスだって言っていたけど、それは本当?」
「うん。ぼくはプリンス・ゴーちゃんだよ」
「どこの国のプリンス?」
「知らない」
「ミラベーラ王国って、きいたことがある?」
「知らない」

「ゴーちゃんは、どうして、ゴーストワールドに行くことになったの?」
「気がついたら、そこにいたんだよ」
「プリンスが住んでいたところって、どんなところ」
「子供だから、なんにもおぼえていないけど・・・・・・、なんか、うるさいおやじがいた」
「国王のこと?」
「そうじゃなくて、・・・・・・、もうちょっとで思い出せそうなんけど」
 うるさいおやじ?でも、父親ではない。ますますわからなくなりました。

 ところが、その数日後、そのうるさいおやじの正体がわかりました。そのおやじが向うから、やってきたのです。
 ドライブウェイの前にリムジンが止まったかと思ったら、中から知らないおじさんが下りてきました。黒いタキシードをきりりと着ていて、映画に出てくる執事のようなスタイルです。
 その時、べらとゴーちゃんはならんで、窓から外を見ていたのですが、
「バトラーのブルーノだ」
 とゴーちゃんが叫びました。
 えっ。
「ブルーノがやってきた!」

「何か思い出したの?」
「うん、犬のなまえを聞いた時、どこかで聞いたことがあると思っていたんだ。あの人はママのバトラーだよ。うるさいけど、やさしいおやじだなんだ」
 バトラーとは執事という意味です。バトラーはご主人のお世話をする人です。
 ゴーちゃんが飛んでいって、玄関のドアをばたんと大きくあけました。べらも、モッヒ、クマハチ、トット、マリンもおいつきました。

「私はミラベーラ王国の執事、ブルーノでございます」
 彼がていねいなあいさつをして、頭を下げました。
「わたしはべら、でございます。こちらはモッヒ、クマハチ、トット、マリンでございます」
 べらも、ていねいにあいさつをしました。
「ブルーノ、きてくれたんだね」
「プリンス・ゴードン殿下、お会いしたかったです」
 ブルーノは白い手袋の手で口をおさえて涙をがまんしようとしましたが、泣きくずれました。どんなにか、会いたかったのでしょう。

「どうして、ぼくがここにいるとわかったの?」
「CikCikをごらんになっていたプリンセス・マルグレットさまが、その歌声が、プリンス・ゴードン殿下そっくりだと言われたのでございます。みなさんでごらんになって、プリンス・ゴードン殿下にまちがいない、ということになったのでございます」
「マルグレットはぼくのお姉ちゃんだよ」
 ゴーちゃんが、みんなに向かって言いました。
 ゴーちゃんがほんもののプリンスだとわかったので、みんな緊張してしまって、言葉がでません。

「プ、プリンスには、お姉ちゃんがいるのでちゅか」
 マリンがごくんとつばをのんで、がんばってききました。
「うん。お姉ちゃんが3人、お兄ちゃんが3人いるよ」
「たくさんいるんですね」
「きおくがもどってきたようだぜ。イエーイ」
 みんなの調子ももどってきたようです。
「そうね、そうね」
 べらが胸のところで指を組んで、喜んでいます。

「それで、王宮では、大さわぎでなのでございます。それで、私がたしかめるために、つかわされましたしだいです」
「ママはげんき?」
「それが」
 とブルーノが下をむきました。
「プリンス・ゴードン殿下がいなくなられてから、かなしみで病気になられ、いまだにベッドからおきあがることができません」
「ママ、ぼくのママ―」
 とゴーちゃんが叫びました。「ぼく、ママに会いたい」
「はい。すぐにおつれいたします。外で、リムジンが待っております」
「ブルーノ、べらちゃんも、フレンズもつれて行っていいかい」
「もちろんでございます。みなさんで、まいりましょう」
 
「ちょっとまってください」
 とべらがあわてて、みんなが行こうとしてるのを止めました。
「海外に行くのですから、そんな簡単にはいきません。したくというものがありますから」
「どんなおしたくでしょうか」
「ビザをとったり、飛行機を予約したり」
「ビザの必要はございません。空港で、ミラベール王国のプライべートジェットがまっております」
「でも、にづくりをしなければなりません」
「何をつめられるのですか」
「ふくとか、くつとか、歯ブラシとか、ブラッシとか」

「人間はたいへんだぜ」
 とモッヒが言いました。
「うん、ぼくたちはみんな、このままでいいから」
 そういえば、旅の用意が必要なのは、人間のべらだけなのでした。
「では、ドレスだけでも、つめてきます。ミラベーラ王国に行ったら、キングやプリンスにお会いすることもあると思うので、この服ではまずいでしょ」
 みんながべらをじろじろ見ました。べらはいつものヒッピースタイルで、シルバー色のトップに、むにさき色の長いスカートに、白いブーツです。

「べらちゃん、ちゃんとしたドレスなんか、あるのでちゅか」
「・・・・・・」
「べらさまのドレスや必要なものは、すべてこちらで用意させていただきますので、ご心配はいりません。どうぞ、みなさま、リムジンにお乗りください」

 というわけで、みんな初めてリムジンという大きな車に乗り、初めてのプライベートジェットに乗り換えて、ミラベーラ王国に行くことになったのです。
 こういうのを「きつねにつままれる」というのかしらとべらは思いました。夢の中にいるような心地です。