べらと、ゆかいでちょっぴりざんねんな仲間たち

 未来のラップスターのモッヒが歌ってみせることになりました。
 モッヒはスペシャル・シャンプーでふくらませた頭の毛をかきあげて、「そうかい、おれの歌がききたいのかい」、という大きな態度です。たのもしい。
 みんなはモッヒがひとりで歌うのを聞いたことがなかったので、とてもたのしみです。

「レッツゴー」
 モッヒは肩をゆらして、リビングの真ん中に出ていきました。
「トッ、トッ、トッ、」
 腰をかがめ、片手を伸ばして、口でリズムを取ります。
 こういうの、テレビで見たことあります。さすが、ラッパー!

「おれのフルサト、アフリカは、
遠い、遠い、タンザニア、ほら、タンザニア、
おれの名前を教えてやろうか、
モッヒ、モッヒ、ほら、もひとつモッヒ
住んでるところは、シスコ、シスコでサンフラン、
ほら、サンフランだぜ」

 部屋から音が消えました。
 だれからも、言葉がありません。
 とても気まずいです。

 めったには聞こえない車の音、時計の針のかちかちまで聞こえます。
 一番先に口をひらくのはだれなのか、それぞれがそう思っていて、目を合わせないようにしていますが、心はきょろきょろしています。
 べらは、もしかしてこういうのがラップというものかと思ってみましたが、それにしても、全部半音下がっていて、たとえるなら、ガイジンがきき手でないほうの手で、はしを使ってごはんを食べているような感じです。
 
「どうして、みんなだまっちゃったの?」
 とゴーちゃんが言いました。
「ねぇ、どうして」
「あのね、モッヒくん、考えてみて。お店に行って、あの服がいいと思っても、自分ににあうというわけじゃないでしょ」
 とべらが言いました。
 つまり、ヘアが合っているからといって、ラップに合っているわけではないと言いたいのです。ラップシンガーになるのはやめたほうがいいと言いたいのです。

「どういうこと?」
 とモッヒです。
「下手だってことだよ。すごいオンチだった」
 とゴ―ちゃんがずばり。
 みんな、どっきり。

「でも、ぼくのラッパーの友達は、ぼくのラップはうまいとすごくほめてくれたんだぜ」
「ほめてくれたのはだれでちゅか。ジェフと犬のブルーノじゃないでちゅうか?」
「そうだけど」
「ぼくも、前に、だまされたんでちゅ」
「ほめたのは、うそだったていうのか」
「そうでちゅ。ふたりはうそつきの悪いやつでちゅ」

 モッヒの中に、はずかしさといかりがこみあげてきました。
「うるさい。スカンクのおまえが、何を知っているというんだ。だまっていろ」
 モッヒがマリンに手をあげようとしました。
「モッヒくん、ぼう力はだめ」
 とべらがその手をおさえました。

「からかわれていたことがわかんないの?どうすれば、あんなにへたに歌えるのかと思っちゃう」
 とまたまたゴーちゃんです。
「なんだと」
 モッヒがゴーちゃんをけとばそうとしましたが、ゴーちゃんは飛び上がれるます。
「やれるもんなら、やってもろ」
 
「さあ、おちついて。みなさん、キッチンで何かのみましょう」
 とべらがさそいました。
「ブルーノって、だれ」
 とゴーちゃんがききました。
「近くに住んでいる犬でちゅ。自分ではシバ犬だと言っているけど、うそなのでちゅ」
「ブルーノは犬なのかぁ」
 ゴーちゃんがはははと笑いました。
「どうかした?」
 とべらがふしぎに思いました。
「なんか、その名まえ、知っている気がする」
「だれ。パパ?」
「ちがう。でも、わかんない」