べらはゴーちゃんのママ探しのことを、おしんに相談しました。おしんはてんとう虫です。みんなは「おしんさん」と呼びますが、べらは「おばや」、おばやはべらを「ひめ」と呼んでいます。
ふたりがどこでどのようにして知り合ったのか、だれも知りません。おしんはめったにしゃべることはありませんし、それもささやき声なので、だれもおしんの声らしい声を聞いたことがないのです。
みんなはおしんがどの部屋のどこにいるのか、いったいどこで何をしているのか、わかりません。おしんは小さいし、飛んでどこかへ行ってしまうし、みんなの前にはほとんどすがたを現さないのです。
でも、べらがおしんをたよりにし、おしんもべらを特別に思っているのはたしかです。 さいしょにマリンが姿を消した時も、どのあたりにいて、どこで寝ているなどは、おしんは知っていました。あちこちに部下がいて、広いネットワークをもっているからです。
てんとう虫はふつうは1年の命ですが、おばやはもう何年も生きているレジェンド虫です。てんとう虫の世界ではインドのマリア・テレサのような存在なのです。おしんが声をかけると何10万という若いてんとう虫が応援にくるらしいといううわさがあります。
「これから寒くなります。私たちてんとう虫は冬になると冬眠しなくてはなりませんから、探すのは春になると思います」
とおしんが言いました。
「わかりました。おばや、ゆっくりお休みください。あたたかくなったら、よろしくお願いね」
その夜、マリンは遅くまで起きていました。
べらが夜中にのどがかわいてキッチンに行くためにリビングを通りかかると、マリンがひとり、窓際にちょこんとすわっていました。
向いの家にはクリスマスのイルミネーションが飾られているので、そのちかちかしているのを眺めているようです。
「マリンくん、ねむられないの?」
「あっ、べらちゃん」
「なにか、困ったことでもある?」
「ううん、ちがうよ。今日は楽しすぎたから、ねむられないでちゅ」
マリンは、スラッカーヒルからよく星のようにかがやくサンフランシスコの町をながめていましたが、きらきら輝くクレスマスツリーやデコレーションを見たは初めてでした。
「おどろきばかりでちゅ。すごかったでちゅ」
マリンの目がまんまるです。
なんてきれいな心のマリンくんなのでしょう。べらの胸がつーんとしました。
どうしてこんなにピュアなスカンクが、あんなにくさいシャワーを出すのかしら。
きっと、そんな自分の小さなからだを守るために、神さまがそう考えてくれのだわ、とべらは思いました。
「マリンには、これからもっといろいろなものを見せてあげるわね。この世界には、たくさんきれいなものがあるから」
「ありがとう、べらちゃん。うれしいなぁ。ぼくは何も知らないから」
「マリンはとくべつにお利口だから、すぐに何でもわかるようになるわよ」
「あのう、べらちゃん、ぼくはサンタクローチュがサンフランシコに住んでいるなんて、知らなかったでちゅ。北のほうに住んでいると思ったいたでちゅ」
えっ。べらが目をぱちくりとしました。何のこと?
「それから、サンタクローチュがひとりではなくてたくさんいて、若いサンタさん、女の人サンタさんがいるなんて、知らなかったでちゅ」
「ちょっと待って。どういうことかな」
べらはちょっとねむたかったのですが、完全に目がさめました。
そして、この週末がどんな日なのか思いだしました。
今日はサンフランシスコでは、人々がサンタクロースのコスチュームをつけて歩く日なのでした。
「あれは本当のサンタクロースじゃないの。今日はね、若い人がサンタクロースのかっこうをして、バーやクラブを回ったりして楽《たの》しむ日なのよ」
とべらが説明しました。
「ああ、そうか。ぼく、まちがっちゃった」
マリンが頭をかきました。
そのしぐさがあまりにかわいらししくて、べらが強くハグしました。
「マリンくんがわたしを探して、遠いところから来てくれて、本当にうれしいわ」
「ぼくも、べらちゃんとくらせて、うれしいでちゅ」
マリンがひっしになってマリンヘッドランズからわたしをさがしてくれたように、わたしもゴーちゃんのママをさがそう、べらはそう思いました。
ゴーちゃんは人間のママに会いたくて、ゴーストワールドからこの地球にやってきたのでした。
では、ゴーちゃんはいつからゴーストワールドに住むようになったのでしょうか。
考えてみれば、ゴーちゃんが生きている人でないということはショック、かわいそうでなりません。べらはなんとかしてゴーちゃんママを見つけて、会わせてあげたいと思いました。
大好きな人に再会できたら、どんなに大かんげきするでしょうね。
べらの目には、そのときのようすが目に浮かんで、涙が出そうです。
だって、べらは・・・・・・、べらにもゴーストワールドに会いたい人はいるのです。だから、ゴーちゃんママも、どんなにかゴーちゃんに会いたいと思っているか、よくわかります。
ところが、ゴーちゃんが自分の名前も、住んでいた場所も知らないので、どこから探せばよいのかわかりません。
ゴーストになると人間でいた時の思い出が全部、消えてしまうのでしょうか。それとも、ゴーちゃんが子どもだったから覚えていないのでしょうか。
おばやも春になればがんばってくれることだし、そのうちに、思いがけないことから、何かきっかけが見つかるかもしれない。そういうことって、よくあるから、とべらは前向きです。
とにかく、今は「ハッピー・ファミリー・コンテスト」に向けて集中することにしました。
来年のハロウィーンにはゴーちゃんが帰ってしまうのですから、今は、みんなと大事な思い出作りをしようとべらは思いました。
それに、もし優勝できたらニュースになって、ゴーちゃんのママが気がついてくれるかもしれません。
一次予選は「ファミリー・ルール」つまり「家族の規則」という作文と、「ハッピー・ファミリー」のビデオです。
「作文のほうはべらちゃんにお願いして、ビデオ制作はぼくが担当します」
とクマハチがはり切っています。
「わたしが作文? 家族の規則といっても、うちにはルールはないわね」
べらは、だれかほかにやりたい人はいないですか?と頼むような顔をしました。
「売れていなくても、そこは一応はライターなんだから、そこはうまく書いてくださいよ」
とトットです。
「売れていなくてもとか、一応とか、べらちゃんに失礼でちゅ」
「あっ、ごめん。本当のことが口から出てしまっちゃった」
めずらしく、トットがあやまりました。
本当のことが口からというのに、かえってきずついたなぁ、とべらは思いましたが、こんな時は、笑うしかないですよね。
はははは。
でも、すぐに、笑わなければよかったと後悔して、足元を見つめました。もっと堂々としていればよかったなぁ。
マリンが下から見上げていました。
「べらちゃんはこれからでちゅ。大作家になりまちゅ」
「マリンくん、いつもありがとう」
べらがしゃがんで、マリンをやさしくなでました。
ふたりがどこでどのようにして知り合ったのか、だれも知りません。おしんはめったにしゃべることはありませんし、それもささやき声なので、だれもおしんの声らしい声を聞いたことがないのです。
みんなはおしんがどの部屋のどこにいるのか、いったいどこで何をしているのか、わかりません。おしんは小さいし、飛んでどこかへ行ってしまうし、みんなの前にはほとんどすがたを現さないのです。
でも、べらがおしんをたよりにし、おしんもべらを特別に思っているのはたしかです。 さいしょにマリンが姿を消した時も、どのあたりにいて、どこで寝ているなどは、おしんは知っていました。あちこちに部下がいて、広いネットワークをもっているからです。
てんとう虫はふつうは1年の命ですが、おばやはもう何年も生きているレジェンド虫です。てんとう虫の世界ではインドのマリア・テレサのような存在なのです。おしんが声をかけると何10万という若いてんとう虫が応援にくるらしいといううわさがあります。
「これから寒くなります。私たちてんとう虫は冬になると冬眠しなくてはなりませんから、探すのは春になると思います」
とおしんが言いました。
「わかりました。おばや、ゆっくりお休みください。あたたかくなったら、よろしくお願いね」
その夜、マリンは遅くまで起きていました。
べらが夜中にのどがかわいてキッチンに行くためにリビングを通りかかると、マリンがひとり、窓際にちょこんとすわっていました。
向いの家にはクリスマスのイルミネーションが飾られているので、そのちかちかしているのを眺めているようです。
「マリンくん、ねむられないの?」
「あっ、べらちゃん」
「なにか、困ったことでもある?」
「ううん、ちがうよ。今日は楽しすぎたから、ねむられないでちゅ」
マリンは、スラッカーヒルからよく星のようにかがやくサンフランシスコの町をながめていましたが、きらきら輝くクレスマスツリーやデコレーションを見たは初めてでした。
「おどろきばかりでちゅ。すごかったでちゅ」
マリンの目がまんまるです。
なんてきれいな心のマリンくんなのでしょう。べらの胸がつーんとしました。
どうしてこんなにピュアなスカンクが、あんなにくさいシャワーを出すのかしら。
きっと、そんな自分の小さなからだを守るために、神さまがそう考えてくれのだわ、とべらは思いました。
「マリンには、これからもっといろいろなものを見せてあげるわね。この世界には、たくさんきれいなものがあるから」
「ありがとう、べらちゃん。うれしいなぁ。ぼくは何も知らないから」
「マリンはとくべつにお利口だから、すぐに何でもわかるようになるわよ」
「あのう、べらちゃん、ぼくはサンタクローチュがサンフランシコに住んでいるなんて、知らなかったでちゅ。北のほうに住んでいると思ったいたでちゅ」
えっ。べらが目をぱちくりとしました。何のこと?
「それから、サンタクローチュがひとりではなくてたくさんいて、若いサンタさん、女の人サンタさんがいるなんて、知らなかったでちゅ」
「ちょっと待って。どういうことかな」
べらはちょっとねむたかったのですが、完全に目がさめました。
そして、この週末がどんな日なのか思いだしました。
今日はサンフランシスコでは、人々がサンタクロースのコスチュームをつけて歩く日なのでした。
「あれは本当のサンタクロースじゃないの。今日はね、若い人がサンタクロースのかっこうをして、バーやクラブを回ったりして楽《たの》しむ日なのよ」
とべらが説明しました。
「ああ、そうか。ぼく、まちがっちゃった」
マリンが頭をかきました。
そのしぐさがあまりにかわいらししくて、べらが強くハグしました。
「マリンくんがわたしを探して、遠いところから来てくれて、本当にうれしいわ」
「ぼくも、べらちゃんとくらせて、うれしいでちゅ」
マリンがひっしになってマリンヘッドランズからわたしをさがしてくれたように、わたしもゴーちゃんのママをさがそう、べらはそう思いました。
ゴーちゃんは人間のママに会いたくて、ゴーストワールドからこの地球にやってきたのでした。
では、ゴーちゃんはいつからゴーストワールドに住むようになったのでしょうか。
考えてみれば、ゴーちゃんが生きている人でないということはショック、かわいそうでなりません。べらはなんとかしてゴーちゃんママを見つけて、会わせてあげたいと思いました。
大好きな人に再会できたら、どんなに大かんげきするでしょうね。
べらの目には、そのときのようすが目に浮かんで、涙が出そうです。
だって、べらは・・・・・・、べらにもゴーストワールドに会いたい人はいるのです。だから、ゴーちゃんママも、どんなにかゴーちゃんに会いたいと思っているか、よくわかります。
ところが、ゴーちゃんが自分の名前も、住んでいた場所も知らないので、どこから探せばよいのかわかりません。
ゴーストになると人間でいた時の思い出が全部、消えてしまうのでしょうか。それとも、ゴーちゃんが子どもだったから覚えていないのでしょうか。
おばやも春になればがんばってくれることだし、そのうちに、思いがけないことから、何かきっかけが見つかるかもしれない。そういうことって、よくあるから、とべらは前向きです。
とにかく、今は「ハッピー・ファミリー・コンテスト」に向けて集中することにしました。
来年のハロウィーンにはゴーちゃんが帰ってしまうのですから、今は、みんなと大事な思い出作りをしようとべらは思いました。
それに、もし優勝できたらニュースになって、ゴーちゃんのママが気がついてくれるかもしれません。
一次予選は「ファミリー・ルール」つまり「家族の規則」という作文と、「ハッピー・ファミリー」のビデオです。
「作文のほうはべらちゃんにお願いして、ビデオ制作はぼくが担当します」
とクマハチがはり切っています。
「わたしが作文? 家族の規則といっても、うちにはルールはないわね」
べらは、だれかほかにやりたい人はいないですか?と頼むような顔をしました。
「売れていなくても、そこは一応はライターなんだから、そこはうまく書いてくださいよ」
とトットです。
「売れていなくてもとか、一応とか、べらちゃんに失礼でちゅ」
「あっ、ごめん。本当のことが口から出てしまっちゃった」
めずらしく、トットがあやまりました。
本当のことが口からというのに、かえってきずついたなぁ、とべらは思いましたが、こんな時は、笑うしかないですよね。
はははは。
でも、すぐに、笑わなければよかったと後悔して、足元を見つめました。もっと堂々としていればよかったなぁ。
マリンが下から見上げていました。
「べらちゃんはこれからでちゅ。大作家になりまちゅ」
「マリンくん、いつもありがとう」
べらがしゃがんで、マリンをやさしくなでました。

