べらのファミリーのニュー・メンバーになったゴーちゃんは、いたずら好きのゴーストでした。
ドアやかいだんのうしろにかくれていて、「わっ」とおどろかすのが大好きです。おかげで、マリンはにおいスプレーを3回も出して、そのたびに、エアークリーナーをかけなければなりませんでした。
「おどろかすのはやめてね。マリンくんの命にかかわることだから」
とべらが言いました。
「うん。もうしない」
ゴーちゃんは、べらにだけはすなおです。
クリスマスが近くなってきたので、クリスマスの飾りを見に、みんなでダウンタウンに行くことになりました。
でも、ゴーちゃんはいたずらが過ぎたので、外出は禁止です。今度はクマハチをおどろかせてしまったのです。
「ぼくはからだは大きいけど、びびりなんだよぉ」
とクマハチが泣きました。
「ゴーちゃん、おどろかさないと、約束したでしょ」
とべらがしかりました。
「ぼく、マリンをおどろかさなかったよ」
「だれも、おどろかしてはだめ。しんぞうに悪いでしょ」
「ごめんなさい。ほんとうはだめだってわかっていたんだけど、大きなクマハチをみたら、おどろかしたくなっちやったんだ」
でも、ゴーちゃんをひとりにするのはかわいそうなので、べらがいっしょに残ることにしました。サンフランシスコにくわしいべらが、みんなのために、歩き方の案内メモを作ってあげました。
みんなが出かけた後、ゴーちゃんがべらの部屋にすうっとはいってきました。
「べらちゃん、まだおこっている?」
「おこっていないわよ」
べらはなんだかとてもうれしそうに、コンピュータの画面を見つめています。
「べらちゃん、何をしているの?」
「スイスにいるベストフレンドのカレンからクリスマスのビデオが届いたので、見ているところ。いっしょに見る?とてもきれいよ」
「ぼく、見たい」
「きのうね、カレンのハズバンドが車をうんてんして出かけて、カレンがビデオをとったのよ。わたしのために」
べらはゴーちゃんのためにいすを用意して、ふたりでなかよくビデオを見ました。
「みずうみがきらきらしていて、きれいだね」
とゴーちゃんです。「これ、どこ?見たことがある気がする」
「スイスよ。行ったことあるの?」
「わかんない」
「ここはルツェルンという湖があるきれいな町よ。ここのホテルには、思い出があるのよ」
「どんな」
「カレンがここでけっこんしたのよ。ホテルには船着き場があってね、カレンは船の上で式をして、そのあと、このホテルでパーティをしたのよ。夜中までおどってたのしかったわ」
「べらちゃんは、ダンスがすきなの?」
「すきよ」
べらが遠くを見つめる目をしました。
「そのパーティは、いつ?」
「5年前になるわ。ああ、もう5年前になっちゃったんだわ」
べらはさみしい目をして天井を見上げ、ため息をつきました。
「時間はながれるもんだよ」
とゴーちゃんです。子供なのに、哲学者のようです。
「そうなのよね」
べらはマウスでクリックして、別の画面を出しました。
カレンが赤ちゃんをひざの上でだいています。
「これが今のカレン。赤ちゃんは長男のジャックくん。3才よ。かわいいでしょ」
うん、とゴーちゃんはじっと画面を見つめていました。じっと、じっと。そして、小さな声で、「ママ」と言いました。
べらがおどろいてゴ―ちゃんを見ました。
ゴ―ちゃんの目は、ペットの金魚が死んでしまった時みたいな悲しい目でした
ここにおいでなさい。
べらが自分のひざをたたくと、ゴーちゃんはぴよこんとひざにのりました。
べらがぎゆっとだきしめました。ゴーちゃんもべらをだきしめました。
涙もののドラマのクライマックスのようなシーンです。
「ゴーちゃんのママって、ゴーストよね?」
「ちがうよ。ぼくのママは、にんげんだよ」
「そうなの!」
ゴーちゃんは会った時、「ママをさがして」って言っていました。それで、べらはあの日、ゴーストのコスチュームをきていたから、ママとまちがえられちゃったのかと思っていたのです。
でも、ゴーちゃんのママは人間でした。
ゴーちゃんはこの地球に、ママをさがしにきたのです。
「ゴ―ちゃんは帰りのトレーンにのりおくれたって言っていたけど、のりおくれたゴーストはほかにもいるのかな?」
「いない」
「ゴーちゃんは、わざとトレーンに乗りおくれたんじゃない? ママをさがそうとして」
「言わない」
「そういうことって、ぜったいに、あると思っていたわ。あるのね、あるのね」
べらの頬が、ピンク色になりました。
「べらちゃん、あるあるって、何があると思っているの?」
「ゴーストワールドの人が、地球に来れるってことよ」
「いたいよ、べらちゃん」
べらがこうんふしすぎて、ゴーちゃんをしめつけていました。
「おっと、いけない」
べらが手をはなしました。
「わたし、ゴーちゃんのママを探してみせるから、ゴーストワールドのことをいろいろおしえてね」
べらは紙とペンを用意しました。
「それでは、名前は?」
「プリンス・ゴーちゃん」
「ちがう。今の名前じゃなくて、前に、地球にいた時の名前。イチローとか、ケネディとかあるでしょ」
「わかんない」
「なんか、おぼえていること、ない?ひとつでもいいんだけど、ない?」
うーん、うーん、とゴーちゃんか考えています。
「ぼくがわかっているのは、ママのおひざの感じ。ぼくはよくだっこされていたんだ。ママのおひざはあったかくて、やわらかかった。ちょっとこの感じとはちがう」
とべらのひざを指さしました。
「すみませんね。やわらかくなくて」
「もういちど、ママのおひざにのってみたいよ、ぼく」
ゴーちゃんが、わっと泣き出しました。つもっていた思いが、吹き出だしてしまったようです。
「わかるよ。その気持ち、すごくわかるから」
べらがまたゴーちゃんを抱きしめました。
「でも、何かもっと情報がほしいわ。しらべる糸口がほしいのよね。何でもいいから」
「ぼくにあるのはママに会いたい気もちと、ママのおひざの感じだけなんだ。でも、ママに会ったら、この人はぼくのママだってすぐにわかるよ。ぼく、ぜったいにわかるよ」
ドアやかいだんのうしろにかくれていて、「わっ」とおどろかすのが大好きです。おかげで、マリンはにおいスプレーを3回も出して、そのたびに、エアークリーナーをかけなければなりませんでした。
「おどろかすのはやめてね。マリンくんの命にかかわることだから」
とべらが言いました。
「うん。もうしない」
ゴーちゃんは、べらにだけはすなおです。
クリスマスが近くなってきたので、クリスマスの飾りを見に、みんなでダウンタウンに行くことになりました。
でも、ゴーちゃんはいたずらが過ぎたので、外出は禁止です。今度はクマハチをおどろかせてしまったのです。
「ぼくはからだは大きいけど、びびりなんだよぉ」
とクマハチが泣きました。
「ゴーちゃん、おどろかさないと、約束したでしょ」
とべらがしかりました。
「ぼく、マリンをおどろかさなかったよ」
「だれも、おどろかしてはだめ。しんぞうに悪いでしょ」
「ごめんなさい。ほんとうはだめだってわかっていたんだけど、大きなクマハチをみたら、おどろかしたくなっちやったんだ」
でも、ゴーちゃんをひとりにするのはかわいそうなので、べらがいっしょに残ることにしました。サンフランシスコにくわしいべらが、みんなのために、歩き方の案内メモを作ってあげました。
みんなが出かけた後、ゴーちゃんがべらの部屋にすうっとはいってきました。
「べらちゃん、まだおこっている?」
「おこっていないわよ」
べらはなんだかとてもうれしそうに、コンピュータの画面を見つめています。
「べらちゃん、何をしているの?」
「スイスにいるベストフレンドのカレンからクリスマスのビデオが届いたので、見ているところ。いっしょに見る?とてもきれいよ」
「ぼく、見たい」
「きのうね、カレンのハズバンドが車をうんてんして出かけて、カレンがビデオをとったのよ。わたしのために」
べらはゴーちゃんのためにいすを用意して、ふたりでなかよくビデオを見ました。
「みずうみがきらきらしていて、きれいだね」
とゴーちゃんです。「これ、どこ?見たことがある気がする」
「スイスよ。行ったことあるの?」
「わかんない」
「ここはルツェルンという湖があるきれいな町よ。ここのホテルには、思い出があるのよ」
「どんな」
「カレンがここでけっこんしたのよ。ホテルには船着き場があってね、カレンは船の上で式をして、そのあと、このホテルでパーティをしたのよ。夜中までおどってたのしかったわ」
「べらちゃんは、ダンスがすきなの?」
「すきよ」
べらが遠くを見つめる目をしました。
「そのパーティは、いつ?」
「5年前になるわ。ああ、もう5年前になっちゃったんだわ」
べらはさみしい目をして天井を見上げ、ため息をつきました。
「時間はながれるもんだよ」
とゴーちゃんです。子供なのに、哲学者のようです。
「そうなのよね」
べらはマウスでクリックして、別の画面を出しました。
カレンが赤ちゃんをひざの上でだいています。
「これが今のカレン。赤ちゃんは長男のジャックくん。3才よ。かわいいでしょ」
うん、とゴーちゃんはじっと画面を見つめていました。じっと、じっと。そして、小さな声で、「ママ」と言いました。
べらがおどろいてゴ―ちゃんを見ました。
ゴ―ちゃんの目は、ペットの金魚が死んでしまった時みたいな悲しい目でした
ここにおいでなさい。
べらが自分のひざをたたくと、ゴーちゃんはぴよこんとひざにのりました。
べらがぎゆっとだきしめました。ゴーちゃんもべらをだきしめました。
涙もののドラマのクライマックスのようなシーンです。
「ゴーちゃんのママって、ゴーストよね?」
「ちがうよ。ぼくのママは、にんげんだよ」
「そうなの!」
ゴーちゃんは会った時、「ママをさがして」って言っていました。それで、べらはあの日、ゴーストのコスチュームをきていたから、ママとまちがえられちゃったのかと思っていたのです。
でも、ゴーちゃんのママは人間でした。
ゴーちゃんはこの地球に、ママをさがしにきたのです。
「ゴ―ちゃんは帰りのトレーンにのりおくれたって言っていたけど、のりおくれたゴーストはほかにもいるのかな?」
「いない」
「ゴーちゃんは、わざとトレーンに乗りおくれたんじゃない? ママをさがそうとして」
「言わない」
「そういうことって、ぜったいに、あると思っていたわ。あるのね、あるのね」
べらの頬が、ピンク色になりました。
「べらちゃん、あるあるって、何があると思っているの?」
「ゴーストワールドの人が、地球に来れるってことよ」
「いたいよ、べらちゃん」
べらがこうんふしすぎて、ゴーちゃんをしめつけていました。
「おっと、いけない」
べらが手をはなしました。
「わたし、ゴーちゃんのママを探してみせるから、ゴーストワールドのことをいろいろおしえてね」
べらは紙とペンを用意しました。
「それでは、名前は?」
「プリンス・ゴーちゃん」
「ちがう。今の名前じゃなくて、前に、地球にいた時の名前。イチローとか、ケネディとかあるでしょ」
「わかんない」
「なんか、おぼえていること、ない?ひとつでもいいんだけど、ない?」
うーん、うーん、とゴーちゃんか考えています。
「ぼくがわかっているのは、ママのおひざの感じ。ぼくはよくだっこされていたんだ。ママのおひざはあったかくて、やわらかかった。ちょっとこの感じとはちがう」
とべらのひざを指さしました。
「すみませんね。やわらかくなくて」
「もういちど、ママのおひざにのってみたいよ、ぼく」
ゴーちゃんが、わっと泣き出しました。つもっていた思いが、吹き出だしてしまったようです。
「わかるよ。その気持ち、すごくわかるから」
べらがまたゴーちゃんを抱きしめました。
「でも、何かもっと情報がほしいわ。しらべる糸口がほしいのよね。何でもいいから」
「ぼくにあるのはママに会いたい気もちと、ママのおひざの感じだけなんだ。でも、ママに会ったら、この人はぼくのママだってすぐにわかるよ。ぼく、ぜったいにわかるよ」

