べらと、ゆかいでちょっぴりざんねんな仲間たち

 10月31日のハロウィーンは、べらの仲間たちの一番好きなイベントです。
 ハロウィーンの日は、アメリカでは大人も子どもも思い思いの仮装コスチュームをつけるので、人々からじろじろ見られることがないからです。
 
 べらの仲間は着替えなくてもそのままでよいのですが、べらだけは人間なので、コスチュームを作らなければなりません。ほんとうは白雪姫になりたかったのですが、衣装を作っているさいちゅうなのに、みんなが叫んでいます。
「べらちゃん、早く、早く。早く行こうよ」
 それで、べらは急いで白いシーツに穴をふたつあけて、それを頭からかぶって、階段をとんとんと下りていきました。
「べらちゃん、それなぁに」
「ゴーストの女王よ」
 べらはそう言って、おもちゃのかんむりをかぶりました。
 ゴーストとはお化けのことなので、ハロウィーンにはぴったりです。

 みんなはメトロにのって、ダウンタウンまで行きました。たくさんの人がいるので、みんなわくわくです。パウェル通りにならんでケーブルカーに乗って、坂道をのぼったり、下ったりしました。ちょっと気温は低いのですが、汗をかいたので風を感じて気持ちがよいです。
  ケーブルカーをおりて、ピア39のKドックという所に行きました。そこには、アシカがたくさんいます。夏は少ないですが、冬になると、何百ものアシカが集まってきます。トットはオットセイですが、アシカと同じ海洋ほにゅう類なので、しんせきみたいなものです。
 
「こんにちは、オウーン」
 とトットが元気にあいさつをしました。
「ウオッ、ウオッ、ウオッ、オッス」
 という大きな声がかえってきました。アシカたちが声をそろえて鳴くと、迫力があります。
 べらちゃんチームも、「オウーン、みんなで来たよー」と声をそろえて、負けずに大きな声を出しました。
「しばらくぶりだね。げんきだったかい」
 とアシカのボスが言いました。
「げんきげんき。ことしは新しいメンバーをつれてきた。スカンクのマリンだよ」

 まりんは小さいので、べらが抱きかかえて、手すりにのせました。
「ぼくがまりんでちゅ」 
 マリンは赤いゴールデンゲートの橋をゆびさしました。
「ぼく、あそこからきたんでちゅ。よろしくおねがいいたしまちゅ」
「マリンは、緑がたくさんあるよいところからきたんだね」
「はい。あそこで、生まれたんでちゅ」
「マリンヘッドランズのおくには、ママル・センターというのがあって、けがをしたぼくたちの仲間を助けている、ときいたことがあるよ」
 とアシカが言いました。
「ぼくは行ったことがないでちゅ」
「わたし、そこにガイドとして行ったことがあるわ。ボランティアがはたらいていて、すばらしいセンターよ」
 とべらが言いました。
「ぼく、行きたい」
 とトットが言いました。
「ぼくも行きたいでちゅ」
「こんど、みんなで行きましょう。わたしが車を運転するから」

 久しぶりに、夜のサンフランシスコで楽しく遊んで、すっかりねむたくなって、フォーレストヒルの家に帰ってきました。
 べらはさっきからだれかにつけられている気がして、何度もふりかえったのですが、だれのすがたも見えません。
 べらが家にはいろうとすると、木の後ろにだれかいるようです。

「そこに、だれかいる?」
 だれも答えません。
 でもべらは何かを感じたので、木に近づいて行きました。
「だれか、いますか」
 すると、木のかげから、ひよっこりと白いゴーストのコスチュームを着た小さな子どもが現れました。
「あらあら、あなただったのね。みんなからはぐれて、迷い子になってしまったのね。こちらにいらっしゃい」
 その子がのこのこ歩いてきました。

「ぼくのママをさがして」
 とその子が言いました。

 かわいそうに。ママからはぐれてしまったのね。
「きんじょに住んでいるの?」
「ちがうよ」
 とその子が首をよこにふりました。
 いいわよ、まかせておいて。わたしがあなたのママを探してあげます。べらが手を出すと、その子がべらの手をつかみました。

「わたしはべらよ。あなたのお名まえは」
「プリンス・ゴーちゃんだよ」
「ゴーちゃん、おうちの電話番号は知っている?」
「知らない」
「おうちはどこ?」
 その子がだまって上をゆびさしました。
「空からきたの?」
 その子がうんとうなずきました。