世界から音が消えたのは、中学二年の冬だった。
高熱が続いた。
目が覚めたとき、真っ白な病室にいて。
お母さんが何か言っているのに、何も聞こえなかった。
口が動いてるだけ。
“聞こえる?”
たぶん、そう言っていた。
私は、笑って頷いた。
本当は、何も聞こえなかった。
医者の説明は、あとから文字で読んだ。
後遺症。
完全な回復は難しい。
“難しい”って、どれくらい?
中学生の私は、ちゃんと理解していなかった。
お母さんは、少しでも望みがある治療はなんでも試させてくれた。
色んな病院を回って、飛行機で遠くへ行ったりもした。
……だけど、治療の甲斐も虚しく、私が音のある世界に戻ることはできなかった。
