あの日、世界から音が消えた。
最初は、治ると思ってた。
治療すればまた音は戻ると、信じて疑わなかった。
でも――
目の前で誰かが笑っているのに、
何も聞こえない。
口が動いているのに、
声が届かない。
ざわめきも、
風の音も、
自分の鼓動さえ、
遠い。
世界が、水の底みたいに静かだった。
怖い、と思うより先に、
私は気づいてしまった。
ああ、もう戻れないんだ。
その日から、
私の世界は音を失った。
そしてきっと、
あの日から、
私は少しずつ変わっていく。
まだ知らなかった。
この静かな世界で、
誰かを好きになるなんて。
