洛陽夜曲

絹のように滑らかな黒髪のなかに、京司は自らの意識を沈めた。

溢れる香りは甘い毒のように彼を惑わせる。
触れ合う距離で漏れた吐息が、彼女の身体を強張らせた。


「拒むんやったら、言葉にして言うてくれ」


絞り出すような京司の呟きに、鈴華は答えの代わりにゆっくりと身を翻した。
揺れる髪の隙間から覗く彼女の瞳が、
射抜くような強さで京司の視線を捉えた。

拒む理由なんて、もうどこにも見当たらなかった。

ただひたすらに、京司を欲する衝動だけがそこにある。
鈴華は逸る心に突き動かされるまま、彼の唇を塞いだ。
密着した体温から伝わるのは、もはや言い逃れのできない事実。
その無言の接吻が、彼女のすべてを肯定する答えとなっていた。

鈴華が紡いだ無言の肯定が、京司の理性を甘く侵食していく。
抱擁は次第にその形を歪め、彼女を圧するほどに力を帯びていく。

その瞳の奥、底知れぬ独占の渇望を宿した彼は、
ただ壊れた均衡を埋めるように、幾度も、貪欲に彼女を求めた。

---鈴華の心に空いた大きな穴を、冷たい風が吹き抜けてゆく。
その空隙を埋めるのは、友への追憶か、それとも京司に向けられた渇愛か。
答えの見えぬ迷路の中で、彼女はただ盲目的に彼の影を追い求めること、
それだけだった。

その腕に感じる重みは、彼にとってただの質量ではなかった。
京司は、鈴華の細い身体を軽々と抱きかかえる。
掌にある無二の至宝を零さぬよう、
細心の注意を払って彼女を寝台へと運んだ。

柔らかなシーツに沈みゆく鈴華。その拍子に、彼女を縁取っていた黒髪が、
潔癖なまでの白地へとこぼれ落ちた。
その一筋一筋の対比は、見る者の息を止めるほどに、
残酷なまでに美しかった。

鈴華はゆっくりと瞼を閉じ、思考を止め、
境界を失った魂のすべてを京司の意思に委ねた。