洛陽夜曲

その惨禍は、京司の心にも濃い影を落とした。
京司は、まるで拭いきれぬ咎をそそごうとするかのように、
幾度も幾度も兄の門を叩いた。しかし、その扉が開くことは、
ついに一度としてなかった。

それは、彼が背負うべき咎ではなかった。その明白な事実を、
彼自身を含め、誰もが深く理解していた。
それなのに、京司の心に降り積もる自責の念はやむことがない。

理由なき贖罪を求めるかのように、京司はただ、
〝生きている“というその一点において己を責め苛んでいた。

---やがて京弥は、京都の北辺、人里離れた地にひっそりと佇む
療養所へと身を寄せた。
しかし、京司がその重い扉を叩くことはついになかった。
我欲の身勝手な再会が、兄にとって救いではなく、
むしろ無遠慮な侵入にしかなり得ないことを、彼は痛いほどに自覚していた。

(俺なんか生まれへん方がよかったんとちがうか…)


その楔は、消えることのない痣のように京司を生涯、苛み続ける事となった。
目の前の人々は、血を流す兄弟を通り越してその背後に重くのしかかる
“後継者”という名の偶像を熱望していた。
彼らの期待は、もはや敬意ではなく、呪いのような執着として
京司にまとわりついて離れなかった。

京弥の心が流す血を誰も見ようとしないその空疎な熱情が、何よりも冷酷に、
京司の心を芯から凍えさせた。


「もうどうでもええわ…」


世界の色は、京司の瞳から急速に零れ落ちていった。

時計の針が講義の開始を告げても、彼はただ、
自室の天井に漂う埃を数えているだけだった。
かつて彼を規定していた「名門大学生」という記号は形を失い、
あとに残されたのは、ただ消費されるのを待つだけの
膨大で無為な空白の時間だった。

抜け殻と化した京司であったが、それでも女たちは
その虚無を埋めるべく、競うように彼を渇望した。
彼女たちは、自らの財を、惜しみなく費やす時間を、
そしてその柔らかな肌さえも、捧げ物のように彼の足元へ投げ出した。
“供物”という名で差し出される女たちの献身を、京司は湯水のごとく消費した。
贅を尽くした狂宴の果て、望むものはすべてその掌中に転がり込み、
彼を満足させるのは容易だった。

熱を失えば、彼はまた新たな灯火を求めて女たちの間を渡り歩く。
その足跡が途絶えることはなく、
彼はただ、尽きることのない欲望の回廊を彷徨い続けていた。