1時ごろに昼食を軽めに済ませてから、
東城さんの車で街中の百貨店へと向かう。

タオルや歯ブラシと日用品から始まり、さらには服やら靴まで東城さんに尋ねられるがまま頷き、それを購入する。


正直俺は服なんて着られればどうだっていい。


今の服装も黒のポロシャツにその辺にほおってあったベージュの麻のパンツにビンケルを引っ掛けてきた質素なものだ。


ポロシャツの胸ポケットに2丁の銃をバッテンに合わせた模様がストーンで入る。


何でも買ってきた母曰わく、これ一枚で3万円近くするらしい。値段を聞かされた時は心底驚いた。


確かに値段が良いものは物持ちもいいが、今日買った一枚2000円弱の似たようなポロシャツと何がそんなに違い、値段に差がでるのか全く分からない。


着れれば3万も2000円も大差ないじゃないかと、俺は思う。


書店で適当に文庫本の棚を物色していると、程なくして会計を済ました東城さんが戻って来た。


「何か探している本でもあるんですか?」


「いや、別に特にはないんだけどね」


東城さんから買い物袋を受け取りながら、腕時計で時刻を確認する。


「夕飯の材料もついでに買って行くんだよね、もう行く?」


「そうですね。結構な荷物ですから一旦車に荷物積んでから行きましょうか。あっ!透さん、デパ地下の焼きプリン好きでしたよね!ついでに買って行きましょうね」


にこにことそう話す東城さんに、一体幾つの頃の話しをされているのかと、苦笑いついでに抗議した。


「確かに美味しいけどさ、東城さん俺はもう5歳そこらの子どもじゃないよ?」


どこまで把握されているのかは定かではないが、時たま夜に出かけ、俺が何をしていようと取り立てて注意も説教もしない。


小さな頃から相変わらず俺には敬語で接っし、家政婦の立場から干渉的になることもまずない東城初子さんは本当に不思議な人だ。


かと思えば俺を随所猫可愛がりしたり、妙に子ども扱いしてみたり逆に大人として接してみたり・・・


いまいち距離感の掴めない時があるが、俺はそうした東城さんが嫌いではなかった。