きみが春なら

「散歩に行かないか」

出来たての夕飯をたらふく食べ終えた後、彼女に言った。
「こんな時間に?」
「見せたい場所があって。きっと喜ぶと思う」


春先とはいえ、夜はまだまだ肌寒い。繋いだ手をジャケットのポケットに入れた。
「すごくあったかい。こうしてると」
「だろ」
ほわん、と微笑む君と視線が合った。

「嬉しそうだな?」
「一緒にのんびり歩ける事って、なかなか無いから」
「……そうだな」

繋いだ手に力を込める。


「ほら。あそこ」
人通りの無い道をしばらく進み、川沿いを指さした。

「わぁ……!」

彼女の顔が、いつかと同じように輝いた。