きみが春なら

イーヴァンはもう一度私の名を呼び、額と額をこつんと合わせた。

「── 愛してる。」

宇宙で一番優しくて
宇宙で一番、悲しい響き。

「私も……!」

離れる背中に向かって叫ぶ。
振り返り頷く彼の表情は、笑っているようにも泣いているようにも見えた。


彼の姿が消えた後。左手に巻かれた、重たいメタルバンドのアナログ時計に触れる。

『怖くないか?』
初めて手を繋いだ時も

『随分繁盛してるんだな?君の店』
噴水の端に座ってお喋りした時も

『もうここには来るな。』
心が離れた夜も

『……好きだ。ハル』
そして、結ばれた夜も。
いつもいつも、彼の腕にあった物だった。 

一番狭い箇所に合わせ金具を留めても、私の手首からはするりと抜けてしまう。
涙が一気にこみ上げ地面に膝を付いて泣きじゃくった。

昨日は、あんなに。
あんなに、あんなに幸せだったのに。

「神様……」

どうか、彼を
守って ──……。