きみが春なら

◇ ◇ ◇ ◇

数日後。
闇市で売るための商品を物色していた俺に、二人の女が暴走機関車のようなスピードで駆け寄ってきた。

「ちょぉぉっと!イーヴァン!」

第一声からもう怒号だ。思わず小指で片耳を塞ぐ。

「なんだなんだ。うるっさいな」
「なんだじゃないわよ!あんた、私達の友達泣かしたらしいじゃない!」
「は?誰?」
「マリナよ、マリナ!」
「あぁ。君を恋人にする気は無いって言っただけだ。これ以上付き纏われるのも迷惑だったんでね」

正直に返答したが、それがまたお気に召さなかったらしい。

「信じられない!これで何人目よ」
「そうよ、女の敵!贅沢者!」
「そう言われても」

両サイドから責められ続け、げんなりしてきた。反論するのも面倒だ。口を噤んでやり過ごす。

「ちょっと、何とか言ったらどうなのよ」
「別に?言いたい事なんて無い。ただ口から産まれてきたんだなぁと思ってるだけ」
「はぁ!?」

二人の女が顔を見合わせる。

「おっ、女なんて大体皆こんなもんよ!ねっ?」
「ねー!」
「……そうかな」

「あ、見つけた!イーヴァン!」

詐欺師仲間の一人が近付いてくるのが見えた。ようやく解放されそうだ。

「じゃ、呼ばれてるから」

まだ文句を言い足りなさそうな二人を振り切り、その場を後にする。

「助かったよ。今度一杯奢る」
「何の事だ?それより良い話を持ってきたぞ。こっちで」

人目に付かぬよう建物の影に隠れて話を聞いた。
彼が持ってきたのは盗みの計画だった。

「それじゃ、ほとんど毎日その家に金が届けられてるんだな?」
「ああ。店のオーナーか雇い主の家なんじゃないか」
「その日の売上げを納めにいってるって訳か」
「狭い夜道、しかも大抵は女が一人だ。途中でかっぱらっちまうのは簡単だろう」
「よく見つけたな?そんな都合のいい店」
「ワゴン販売のホットドッグ店だ。最近は毎日同じ場所で出店してる」

小柄な彼が自慢げに胸をはるもんだから、吹き出してしまう。

「いいね。今夜、早速下見だ」