教会に寄って皆に無事を知らせた後、いつもの通り店に出た。
混み合う時間帯も過ぎ、お客さんが途切れた隙にワゴン前の掃き掃除をする。ゴミを捨てようと裏通りまでやってきた時。
「ハル」
ものすごい力で体を引っ張られ、次の瞬間にはもう彼の胸の中にいた。
名前を呼ぼうとする度、また乱暴に口を塞がれて。昨夜とは別人のような彼は息継ぎの間すら与えてくれない。
ようやく唇が離れた時には、お互い肩で息をしていた。
「イーヴァン…?」
「……」
「どうしたの?」
何かあったのだ、と一目でわかった。彼は縋りつくように両手で私の頬に触れる。
「ロシアを離れる事になった。今すぐ」
「……え?」
「事情があるんだ。最後に顔が見たくて」
どく、と心臓が鳴る。最後?
「もう……会えないって事?」
彼の手に自分の手を重ねる。はっきり自覚できるほど声が震えていた。
「必ず迎えにくる。時間がかかったとしても、必ず」
「待っていてくれるか?」
頷いた拍子に涙が落ちた。彼は自分のしていた腕時計を外し、私の手首に填める。
「持っててくれ。俺の代わりに」
「……うん……」
泣きたくなんかなかった。
本当に最後になるような気がするから
泣きたく、ないのに。
混み合う時間帯も過ぎ、お客さんが途切れた隙にワゴン前の掃き掃除をする。ゴミを捨てようと裏通りまでやってきた時。
「ハル」
ものすごい力で体を引っ張られ、次の瞬間にはもう彼の胸の中にいた。
名前を呼ぼうとする度、また乱暴に口を塞がれて。昨夜とは別人のような彼は息継ぎの間すら与えてくれない。
ようやく唇が離れた時には、お互い肩で息をしていた。
「イーヴァン…?」
「……」
「どうしたの?」
何かあったのだ、と一目でわかった。彼は縋りつくように両手で私の頬に触れる。
「ロシアを離れる事になった。今すぐ」
「……え?」
「事情があるんだ。最後に顔が見たくて」
どく、と心臓が鳴る。最後?
「もう……会えないって事?」
彼の手に自分の手を重ねる。はっきり自覚できるほど声が震えていた。
「必ず迎えにくる。時間がかかったとしても、必ず」
「待っていてくれるか?」
頷いた拍子に涙が落ちた。彼は自分のしていた腕時計を外し、私の手首に填める。
「持っててくれ。俺の代わりに」
「……うん……」
泣きたくなんかなかった。
本当に最後になるような気がするから
泣きたく、ないのに。
