きみが春なら

── 視界が
真っ黒に塗りつぶされていく。

「今すぐ逃げろ。出来るだけ遠くに」

腰が抜けそうな俺に、ダニーがボストンバッグを放って寄越す。

「いつ警察がきてもおかしくない。どこまで騙せるかわからんが、逃がす時間くらいは稼いでやるよ」
「騙すって。バレたらお前もただじゃすまないぞ」
「はは!今更罪の一つや二つ増えたからって、何だ。どのみち死んだら地獄行きだよ」
「……そうだな」
こんな時なのに二人の間に笑いが起こる。

「捕まったら終わりだ。もう行け」
「ああ」
ダニー、と呼びかけると彼が顔を上げる。

「……ありがとう。お前とやってきて良かった」

一瞬細まった眼鏡の奥の瞳は、すぐに真剣なものに変わった。

「死ぬなよ。相棒」



住み慣れた街を全速力で駆ける。

「やってくれたな、アーサー……!」

『お前だけ幸せになるなんて許さない』。
『道連れにしてやる』。

そんな声が聞こえてきそうだ。


── 死ぬわけにはいかない。逃げるしかない。
でもその前に、