きみが春なら

夢の中にいるみたいに、ふわふわした心地で。一糸纏わず抱きしめ合った。

「熱いな?体」

そう囁かれ思わず目線を逸らしてしまう。さっきからまともに顔が見られない。
私に覆い被さる彼がふっ、と笑う気配がしたと思うと、優しいキスが降ってくる。

── 逃げ出したいほど恥ずかしいのに
涙が出るほど幸福だった。
きっと、このまま
この人に溺れてしまうんだ。

「好き……」

彼のすべてを受け入れながら
うわ言みたいに繰り返す。

「大好きよ」
「……うん」

部屋に響くのはお互いの吐息と、止めどなくベッドが軋む音。
全身でぎゅっと抱きつくと、彼が一層深くなったのがわかって。
苦しげに眉を寄せ動きを止めたイーヴァンは、口元だけで笑う。

「辛くないか。怖くもない?」
「大丈夫」
「じゃあ、もうちょっと……このまま」

ぽすんと私に体を預けた彼に、また口付けられた。


「── 大好きだ。俺も」


誰かをこれほど愛しく思う夜が訪れるなんて思わなかった。
父に会えるなら、それでもいいって。
生きる事を手放しそうになった自分が恥ずかしかった。

こんなに優しい目で見つめてくれる人がいるのに。
いつだって必死に守ってくれる人がいるのに。