きみが春なら

……柄じゃない。本当に。
仲良く噴水に落ちた俺たちは、ベンチに並んで腰かけ体を拭いていた。

「随分お人好しなんだな?」
「そっちも同じでしょ」

彼女はワンピースの裾を絞りながら言う。それでも後から後から垂れてくる水滴。塗れた黒髪が艶めいている。

「修道女としては放っておけなかったって訳か」
「え?」
「これ。ドゥーブル教会のだろ?」

渡されたタオルには、街で何度も見かけた事のあるマークの刺繍が入っている。

「……修道女じゃないわ」
「え?」
「仕事を手伝っているだけ。私は修道女にはなれないの」
どういう意味だ、と尋ねる前に彼女はサッと立ち上がった。

「今日はどうもありがとう。」

凛とした声の中に、少しだけ淋しさが混じっている気がした。

「俺はイーヴァン。君は?」

彼女が俺を見下ろす。

「ハルよ」
「……ハル?変わった名だな」
「言いやすいでしょ?」
「確かに」

ふふ、なんて。はにかんだ笑顔を見た時なぜかホッとした。
笑うと幼い印象に変わる。

「風邪ひくなよ」
「あなたもね。」

遠ざかっていく背中が、やがて人混みに消えるまで。その場で何となく眺めていた。