きみが春なら

「……わかった、」

教会を飲み込む炎は、ますます勢いを増している。この距離でも熱風で喉が焼けそうだ。
「待って、あなた何する気!?」
服の裾を捕まれたが、振り切って走った。

正門からは、どう考えても入れない。別の入口を探しに裏手へまわる。制止する声に構っている暇は無かった。
「よし、」
炎が途切れている窓に石をぶつける。ヒビが入った箇所を思い切り蹴破ると、一気に煙が吹き出した。
ギリギリのところまで炎が迫っていたものの何とか中に滑り込む。

そこは廊下の途中だった。白い煙が濛々と立ちこめ、ガラスの割れる音がひっきりなしに響いている。

「ハル!どこだ!?」

喉にまとわりつく煙の味。息苦しさに激しくむせた。
長くはいられない。振り返ってすぐ、何かに躓いた。

足下を見て息を呑む。オレンジ色のジャンパーを着た男が頭を撃ち抜いて死んでいた。
その手には銃がある。

── こいつが犯人か。

口元が微かに笑ったままだ。
思わず目を逸らした先に、奥へと続く細い廊下があった。

「ここか!」

煙のせいで視界がほぼきかなくなっていた。
力を振り絞り、最奥の部屋まで一気に駆けた。