きみが春なら

◇ ◇ ◇ ◇

それきりだと思っていた彼女との再会は、割とあっさり訪れた。

「ん?」

いつも通る広場を横切ろうとした時。視界の端に黒い頭が映り思わず足を止めた。

「あれはこの間の……」

ブロンドの髪の人間が多いロシアで彼女の黒髪は一際目立つ。大きな噴水の縁に立ち、中央に生える木に向かって手を伸ばしている。

「あ、危ないよお姉ちゃん!」
「大丈夫。もう少し」

高い枝に引っかかる風船。側には子ども。
一目で状況が把握できた。限界まで背伸びをしているが、その指先はあと少しの所で空を切る。

「……」

おいおい、またか。何かの縁か?

── 『神様は見ていてくれる』。

本当だろうな?ダニー。


「いいよ。俺がとる」

彼女の背後から手を伸ばした。

「あなたは……」

驚いた顔で振り返った彼女に目配せをする。枝に絡まった風船は難なく回収できた。

「ほら。ボウズ」
「ありがと……うわぁっ!」

子どもに渡した瞬間、突風が吹いた。小さな手から離れた風船を再びさらっていく。

「あっ」
「おい!」

風船を捕まえようとした彼女がバランスを崩した時。ほとんど反射的に手を出していた。