「花音様は、朝から一度も弱音を吐いていません」
静かな声だけど、はっきり言い切った。
「今も寝ずに勉強されています。あなた達にそれができますか?」
誰も何も言えない。
少しの沈黙のあと、メイドたちの足音が離れていった。
私は柱の陰で、ぎゅっと手を握る。
胸が熱くなり、気付いた時には走り出していた。
そして思わず紬ちゃんに抱きついた。
「紬ちゃん!ありがとう!」
「か、花音様!?」
とても驚いた表情で私を見る。
「陰から見ていたのですか!?」
「うん……そしたら紬ちゃんが」
「私は……よく知りもしないのに、陰口を言う連中が嫌いなだけです」
ぶっきらぼうな言い方だけど、紬ちゃんなりの優しさなんだよね。
「とにかくっ……早くお風呂にお入りください!」
紬ちゃんはそう言って背を向けた。
ちょっと恥ずかしそうにしてるような……。
「ありがとう、紬ちゃん」
ここに来て寂しい思いもしていたけど、こうやってわかってくれる人もいる。
それだけでとても心強い。



