それからどれくらい勉強していたんだろう。
ようやく区切りがついた頃には、もう体が限界だった。
「……お風呂入ろ」
廊下を歩きながら、大きく伸びをする。
こんなところ、誰にも見られなきゃいいなと思いながら。
しばらくして、曲がり角の向こうから話し声が聞こえてきた。
メイドさんたちだ。
挨拶しようと身を乗り出したその時……。
「今日の花音様、全然ダメだったみたいよ」
「当たり前じゃない?普通のお嬢様なんでしょ」
「箱入りって感じよね」
「それなのに要様の婚約者候補だなんて……」
胸が、ぎゅっと痛くなる。
「顔がいいだけでしょ」
「それに使用人に敬語使うとか、変わってるよね」
「あーいいなぁ、要様の近くにいれるなんて!」
「ほんと。何もできないのに要様の奥様になれちゃうんだから」
胸が苦しくなり、足が止まる。
……そうだよね。
当たり前だよね……私、何もできないし。
最初の挨拶で感じていた違和感はこれだったんだ。
みんな私の事を歓迎していない。
踵を返して部屋に戻ろうとした。
しかし、突然紬ちゃんの声がした。
「……いい加減にしなさい」
驚いて思わず身を乗り出し見ると……
紬ちゃんがさっき話していたメイドたちの近くに寄って行く。



