ダンスのレッスンが終わったあとも、私の一日は終わらなかった。
午後からは華道、裁縫、語学、そして経営の勉強。
次から次へと新しいことを教えられて、頭がいっぱいになる。
華道では花の向きひとつで注意され、裁縫では針を何度も指に刺した。
語学はなんとかついていけたけど、経営の話になると数字ばかりで頭がぼんやりしてくる。
気づけば、窓の外はもうすっかり暗くなっていた。
机に向かったまま、私はぐったりと肩を落とす。
「……花音様」
紬ちゃんが少し呆れた声で言った。
「もうお休みになられてはどうですか?」
「え?」
顔を上げる。
「今日は初日です。ここまで出来れば十分です」
でも、私は首を横に振った。
「だめだよ。明日は月曜日だし、学校の予習もしなきゃ」
「予習もですか?」
私は少しだけ視線を落とした。
「うん……みんなが期待してくれてるのに、こんなんじゃだめだから」
紬ちゃんはしばらく私を見ていた。
そして小さくため息をつく。
「……本当に、面倒な方ですね」
そう言いながらも、ティーカップに紅茶を注いだ。
「少しは休憩してください」
「あっ、ありがとう!」
机の横にカップを置くと、そのまま静かに部屋を出て行く。
優しい香りの湯気が、ふわりと上がった。



