「……続けますね」
さっきまでの低い声とは違う、いつもの穏やかな声。
そして一歩下がる。
さっきまでの距離が嘘みたいだ。
「花音さん」
「はいっ……」
「今のステップ、もう一度」
「……はい」
「まだ全然ですね。社交界で踊るには、その程度では困ります」
表向きの顔だけど、厳しい表情で言われる。
「す、すみません……練習します」
「初日にしては上出来じゃないですか、ねぇ峰山さんっ」
瀬戸内先生がそう言うと、ドアの方から迅さんの声がして振り向いた。
「はい、お披露目パーティまではまだ日にちもございます、きっと上達されるでしょう」
いつからそこにいたんだろう。
夢中になっていたから気付かなかった。
迅さんは期待のまなざしでこっちを見てくる。
「そうですね、他にもレッスンがありますからダンスはここまででいいでしょう」
要さんはぱっと離れ、何事もなかったみたいに歩いている。
でも私は、胸の鼓動が鳴り止まなくて。
ダンスレッスンって……心臓に悪い。



