先生が音楽を流すと、静かなワルツがホールに響いた。
それだけで緊張してしまう。
本番は大勢の人の前で踊るんだよね……
いつかそんな日が来るんだろうな。
「ではまず基本姿勢から」
先生が説明する。
私はそれを必死に聞きながら、足の位置を確認する。
でも……難しい。
足がこんがらがりそう。
その時。
「代わります」
要さんの声がしたので、先生が一歩下がった。
「さすが要様ですね、お願いいたします」
え……要さんと……?
要さんが私の前に立ち、静かに手を差し出した。
「手を」
私は少し緊張しながら手を重ねる。
すると、ぐっと引き寄せられた。
腰に手が回り、顔が近くなる。
思っていたよりずっと近いよっ……
先生が少し離れた位置に移動した。
その瞬間だった。
要さんの声が、すぐ耳元で聞こえた。
「……そんなに緊張すんなよ」
え?驚いて顔を上げる。
要さんはいつもの無表情のまま。
でも声は小さくて、先生には聞こえていないみたい。
「足ばっか見んな、俺を見ろ」
さっきまでの敬語じゃない。
タメ口……
「え、あ……」
心臓がドキドキする。
「ほら」
要さんが小さく言う。
「また固まってる」
「すみませ……」
「……下手だな」
意地悪そうに、ほんの少しだけ口元が動いた気がした。
今笑った……?
それを見て、心臓が大きく跳ねる。



