「要様、あの件のことでよろしいでしょうか」
低い声、聞いたことのある男性の声。
もしかして……峰山さん?
「早く入れ」
私は息を止めた。
これは……要さんの声だよね……。
もしかして、この部屋って。
要さんの部屋!?
私は本棚の陰で、必死に息を殺した。
足音が部屋の奥へと進んでいく。
「誰もいないな?」
要さんの声が聞こえる。
「はい。夕食の準備で皆下へ行っております」
峰山さんが答えた。
やばい……こんな時にお腹が鳴りそうだ。
冷や汗がどんどん出てくる。
早く出て行ってぇぇぇ……
しかし私の願いとは裏腹に、椅子が引かれる音がした。
要さんが机の前に座ったらしい。
「で?」
少し低い声。
私と話していた時とは、全然違う。
「黒耀の方ですが」
峰山さんがタブレットを操作する音がした。
黒耀……?
聞き慣れない言葉に、私は思わず耳を澄ませる。
「例の件ですが、やはり獅堂家の内部に隠されている資料がある可能性が高いようです」
要さんが小さく舌打ちした。
「……やっぱりか」
え……?
思わず息を呑む。
い、今、舌打ち……した?
峰山さんが続ける。
「祖父君の代の記録を調べたメンバーからの連絡です、まだ確実とは言えませんが」



