恋が生まれた日

あの日から数ヶ月

紬は研修医として様々な科を回りながら、慌ただしい毎日を過ごしていた

それでも一度たりとも忘れていなかった

夕暮れの待合室で泣いていた葵の姿を


産婦人科研修が終わり、次は地域研修だった

紬は地方の小さな病院への配属だった

これはあえて紬自身が選んだ

限られた人材、限られた器具の中で医療を提供する毎日

都会の大きな病院とは違い、ここでは一人の医師が幅広い患者を診る

風邪の子どもから、腰を痛めた高齢者、時には救急患者まで

高度な医療が必要な患者を前に、自分たちにできることの限界を感じ、歯がゆい思いをすることもあった

それでも紬にとっては学ぶことの多い日々だった

一緒に働くスタッフや患者は温かい人ばかりで、ここでもまた紬の人柄に惹かれる人は多かった

中には紬と少し話をするためだけに外来を訪れる患者もいたほどだ

そんな日も長くは続かずあっという間に地域研修も終えた

離れる前、スタッフの集合写真をもらった

中央で照れくさそうに笑う紬の周りには、肩を組んだ看護師やスタッフたち

皆、まるで家族のような笑顔だった

その写真は今も、紬の家に大切に飾ってある

ふと目に入るたび、あの場所で過ごした温かい日々を思い出す

今日もまたそれを見て出勤する