恋が生まれた日



産婦人科での研修も残りわずかとなったころ新たな問題が紬を襲う

金髪のロングヘアで大きめのパーカーとミニスカートの少女

パーカーの下は、まだ大きくないが明らかに膨らんだお腹が見えた

問診票から分かるのは生理が約半年来ていないということだ

紬は椅子に浅く座り直し少女に向き合う

真面目に生きて来た紬にとって正反対の子

どう関わっていいか分からない

だからこそ簡単なキャッチボールから始めてみる


「こんにちは

私は朝比奈です

名前を教えてもらえるかな?」

「......だる」


紬は一瞬言葉を失う

そっぽを向いて視線を合わせようとしない

見かねて少女の隣に座っていた女性が答える


「葵です

水野葵」


「名前くらいちゃんと答えなさい」と葵に言っているがその言葉も届いていないようだ


「葵ちゃん、何個か聞かせてね

今日はなんでここに来たの?」

「......書いてあるでしょ」

「......そう、だね」


何を聞いても切れ味の良い刃物でスパッと切るかのように返事をする

これだったら日が経ったトマトでも綺麗に切れそうだ――
紬はそんな訳のわからない想像をしてしまう

その後は付き添いの人から話を聞く

ある日を境に食事をしている姿を見なくなったという

年頃だから体型を気にすることもあると気に留めなかった

ある日トイレに座り込んでえずいている葵の姿を見た

食べてないはずなのに大きいお腹

まさか、と思い連れて来たのだという