影の僕と光の君

放課後 春風は部活の帰り道、商店街を歩いていた
バスケ部のジャージ姿の彼はどこか頼りないもののその瞳には純粋な光が宿っている
見慣れたウルフカットの背中を見つけては思わず立ち止まる
クラスの優等生こと魔海日菜だ 
…だが、彼はいつもとは違う
路地裏へと吸い込まれていくその姿を春風はなぜか見過ごすことができなかった
路地裏のコンクリートの壁にもたれかかる魔海は昼間の制服姿とは打って変わって革ジャンにダメージジーンズ、ヘソ出しのトップスという出立ちだった
耳元のピアスが鈍く光り指に挟んだタバコから白い煙が立ち昇る
昼間は決して見せない冷めた表情をしていた
その横には見るからにチャラチャラした男が二人魔海に話しかけている
「陽菜さ〜ん、今夜どう? いいとこあんすよ」
「え~?興味な~い」
魔海は高い声で男たちをあしらう
「あの、魔海くん、?」
春風が震える声で声をかける
魔海は驚いたように振り返った だがすぐに冷たい表情に戻る
「…お、やほ 」
魔海はタバコを地面に落とすと靴で踏み消した
「そ、その…魔海くんが路地裏に入っていくのが見えて…」
「ふーん で、僕のこと見ちゃったわけ?」
魔海は春風の目の前まで歩み寄すと挑発的な笑みを浮かべる
「このこと…誰にも言わないでくれる? 約束だよ」
魔海は春風の肩に軽く手を置くと顔を近づけた
彼から漂うタバコと香水の匂いに春風の心臓は激しく跳ねる
「…分かってるよね?」
その言葉と普段の魔海とのギャップに春風は戸惑いを隠せない
でもその戸惑い以上に彼の心の中に湧き上がってきた甘い感情はそれでも気になってしまうからかもしれない