刺繍に込めた本当の幸福

 それからのシルヴァンは、お店を訪れる不思議な客たちに言葉をかけます。
 海賊の亡骸や、大きなフクロウに、縋(すが)るような声で問いかけるようになりました。

「イーハトーブにあるという、金の針と竜の髭をご存知ありませんか?」

 けれども皆、銀河の砂を噛むような顔で首を振るばかり。
 シルヴァンの肩は日に日に薄く、寂しくなっていきましたが、透明なルミナが店を訪れるときだけは、無理に琥珀色の柔らかな微笑みを浮かべるのでした。

「ねえ、シルヴァン。なんだか最近、あなたの影が透きとおって見えるわ。お仕事で疲れているのではないの?」

 ルミナの心配そうな声が、実体のない風のように彼の頬を撫でます。

「そんなことはありませんよ。さあ、今日のご注文を……」

 そう言って振り返ったシルヴァンは、愕然として立ち尽くしました。
 彼女のために縫い上げ準備した洋服が、まるで霧に溶けたように見つけられないのです。

(どこだ。どこへやった。僕は、……誰に、何を贈ろうとしていたんだっけ)

「ルミナ……様」と呟き思い出したかのように、引き出し中のノートを確認しました。