「音夢ちゃん、本番行くよ~」
「はい!」
スタッフさんに声をかけられて、返事をしながら楽屋を出る。
今日は、【Sweet Girls】史上最大のイベント『Sweet Girls コレクション』が開催される。
会場は東京近郊にあるアリーナで、人気アーティストがコンサートを行うことも多い場所。
1万人以上のお客さんの前でランウェイを歩く日が来るなんて、2年前は思ってもいなかった。
この2年間、モデルとしての基礎レッスンを受けて、雑誌の撮影やイベントの出演もたくさんさせてもらった。
だから今日は自信を持っていける。
だってわたしには…
「音夢ちゃん、楽しもうね!」
「おまえらしく歩けよ」
こうしていつも背中を押してくれる大好きな人と大切な仲間がいるから。
わたしはもうひとりなんかじゃないから。
「音夢ちゃん出ます!」
舞台袖にいるスタッフさんの合図で、いよいよ本番のステージに立つ。
出た瞬間、たくさんの歓声と拍手に包まれてそれだけで胸がいっぱいになる。
「音夢ちゃ~ん!」
ランウェイを歩いていたら、客席のあちこちからわたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。
わたしを応援してくれている人達が、この広い会場にこんなにたくさんいるんだ。
「ありがとう」の気持を込めて最高の笑顔でポーズを決めて舞台袖へ戻った。
「お疲れ様!音夢ちゃん大成功だね!」
「良く頑張ったな、美夢」
舞台袖に戻ると、真っ先に凛ちゃんと皇月先輩が声をかけてくれた。
その後は一旦楽屋に戻って休憩となり、全てのモデルさん達がランウェイを歩いたあと、クライマックスにもう一度衣装替えをしてステージに出ることになっている。
楽屋にあるモニターで他のモデルさん達のショーを見ていたら、あっというまに時間が過ぎて、気づけばイベントのクライマックス。
再びステージに立つと、変わらず温かい拍手と歓声で迎えられた。
「さあ、いよいよイベントもクライマックスということで再びモデルの皆さんに登場して頂きました。最後に会場に来てくれた皆さん、いつも応援しくれているファンの皆さんへ一言ずつお願いします」
司会の人にマイクを渡されて、まずは今やテレビ出演も多い超人気モデルの皇月先輩と凛ちゃんがコメントをした。
ふたりの人気はとどまることなくさらに勢いを増していて、会場からは割れんばかりの拍手が起きた。
「続いては音夢さん、お願いします」
ついにわたしの番が来て、凛ちゃんからマイクが手渡された。
超人気モデルのふたりの後だと思うとプレッシャーと緊張もあるけれど、それよりも今日この場所に立てた感動の方が大きくて。
わたしは一度深呼吸をして話し始めた。
「まずは今日会場に来て下さった皆さん、本当にありがとうございます。わたしは音夢として活動するまで本当に自分に自信がなくて、いつも“わたしなんか”って思っていました。でも、モデルのお仕事を始めて少しずつ変われたような気がします。今日こうしてこんなにたくさんの方達の前でも自信を持ってランウェイを歩けたのは、応援して下さっている皆さんのおかげです。本当にありがとうございました」
そう言ってお辞儀をすると、会場中に大きくて温かな拍手が響いた。
「音夢ちゃん~!」
「ありがとう~!」
どこからかそんな声援も聞こえて、嬉しさと感動で胸がいっぱいになって思わず涙が溢れていた。
ずっと自分に自信がなくて“わたしなんか”って思ってた。
だけど、皇月先輩がくれた「わたしなんかって言うなよ」の一言が、わたしを変えてくれたんだ。
そう、まるでシンデレラをお姫様に変えてくれた魔法のように。
あの日、皇月先輩がわたしにくれた夢は今も消えずにこうして続いている。
そしてきっとこれからも続いていく。
だから、今自分に自信がなくて“わたしなんか”って思っている人に伝えたい。
どうか“わたしなんか”って自分で自分を卑下しないで欲しい。
あなたにはあなたらしく輝ける場所がきっどこかにあるから。
“わたしにもできる”って一歩踏み出せば、きっと世界は変わるよ――。
*END*



