「七星くん、美夢ちゃん、誕生日おめでとう!」
「ありがとうございます」
7月半ばの週末。
わたしは、都内にあるホテルのレストランに来ていた。
所属している事務所主催で、わたしと皇月先輩の合同誕生日パーティーを開いてくれることになったから。
期末試験が終わって夏休み目前ということもあり、凛ちゃんも参加してくれている。
「美夢ちゃん、やっぱりその衣装似合ってるね。可愛い」
「ありがとう」
凛ちゃんに言われると嬉しいな。
パーティーの前に【Sweet Girls】の撮影があって、その時の衣装をそのまま着させてもらっているんだけど。
夏らしく人魚姫をテーマにした衣装で、海底をイメージした貝殻とジュエリー柄のブルーを基調にしたティアードジャンパースカートはとても可愛くて、わたしもお気に入り。
ちなみに凛ちゃんは色違いでピンクを基調にしたワンピースの衣装を着ている。
「うわ~このケーキ可愛い!“海底のパーティー” だって」
「こっちのゼリーは“人魚姫の涙”っていう名前だよ。すごいこだわってるね」
「これは絶対インスタ映えだよね!あとでアップしよう!」
瞳をキラキラさせながらスマホのカメラで写真を撮るわたしと凛ちゃん。
「おまえらはしゃぎすぎだろ」
そんなわたしたちを見て、呆れたようにつぶやいたのは皇月先輩。
「だってこんな可愛いスウィーツ見たら女子はテンション上がりますよ!」
凛ちゃんとふたりで顔を見合わせて「ね~」と言い合うと、皇月先輩は「好きにしろ」と言いながらさっさと自分の席に戻っていった。
「やっぱり男子はこういうの興味ないみたいね。ここ、最近大人気で予約取るの大変で有名なビュッフェなんだけど」
わたしたちの会話を聞いていた美雲さんが苦笑しながらそうつぶやいた。
わたしたちが来ているのは某有名高級ホテル内にある最近人気急上昇中のデザートビュッフェで、毎回予約が殺到している場所。
季節ごとに限定プランがあって、今は夏らしく童話の人魚姫をモチーフにしたスウィーツになっている。
「それにしても誕生日が七夕で好きな人と一緒なんてロマンチックだよね」
お皿いっぱいにスウィーツを乗せて席に戻りながら、凛ちゃんが言った。
「そうかな」
「そうだよ。これはもう運命の出会いって感じだよね」
「運命、か…」
確かに、小学生の頃偶然出逢っていた人と同じ中学で再会したということも含めて、皇月先輩とは縁があるし、凛ちゃんの言う通りこれが“運命の出会い”なのかもしれない。
「美夢、これ」
そんなことを考えていたら、突然そんな言葉と共に目の前に小さな箱が差し出された。
「…え?」
驚いて顔を上げると、向かいの席に座っている皇月先輩がちょっと恥ずかしそうに視線を逸らしている。
「あの、これって…」
「だから、誕生日プレゼント」
「わたしがもらっていいんですか?」
「うん」
「…ありがとうございます…」
まさか皇月先輩から誕生日プレゼントをもらえるなんて思っていなくて信じられない気持ちで箱を開けると、中から出てきたのは香水だった。
「これ、Pinky Candyの数量限定香水じゃない!」
隣で凛ちゃんがはしゃいだ声を上げた。
そう、箱の中に入っていたのはロリータファッションの中でも人気の高いブランド“Pinky Candy”が出している数量限定の香水だったんだ。
でも、確か発売数日で完売してもう手に入らないと言われていたはずなんだけど…と疑問に思っていると、「美雲さんに用意してもらった」と皇月先輩が口にした。
「七星くんから相談を受けて、特別ルートで頼んだの」
「ありがとうございます!大事に使います!」
満面の笑みでそう言ったわたしに、美雲さんも皇月先輩も笑顔で頷いてくれた。
それからわたしも皇月先輩にプレゼントとして“王子様モデル”にちなんでクラウンデザインのペンダントを渡した。
そして凛ちゃんからはロリータ系ファッションブランドの中でも人気が高い“Very Berry”のバッグをプレゼントしてもらった。
大好きなふたりに誕生日を祝ってもらってプレゼントをもらえるなんて、去年の誕生日は思ってもいなかった。
「今日は本当にありがとうございました」
家までの道を美雲さんが運転する車で送ってもらって自宅の前まで着いた時、改めてお礼を言うと、「喜んでくれてよかった。また次の撮影頑張ろうね!」と美雲さんと凛ちゃんが言ってくれて。
皇月先輩も「プレゼントありがとう」と優しい笑顔で言ってくれた。
14歳は素敵な1年になるといいな。
車を見送りながら心からそう願った。



