カワイイは最強!〜地味子のカワイイ・プロジェクト〜



新しいクラスにもだいぶ慣れてきた、6月のある日。


「見て見て!わたし、スウィガのティーパーティー当選したの!」


朝、日菜子ちゃんが教室に入るなりわたしのところに駆け寄って来た。


日菜子ちゃんが手に持っていたのは、『Sweet Girls』のティーパーティーの招待状。


去年わたしのもとにも届いたものだ。


去年は“月島 美夢”の名前で特別ゲストとして招待してもらったけど、今年はモデルの“音夢”として正式にお仕事で出席することになっている。


もちろん、凛ちゃんや皇月先輩も一緒に。


「音夢ちゃんのパフォーマンス楽しみにしてるからね!」


瞳をキラキラ輝かせて言ってくれた日菜子ちゃんの言葉が嬉しくて、楽しんでもらえるように頑張ろうと思えた。


☆☆ ☆


お茶会当日。


去年と同じホテルの宴会場を貸し切ってのパーティーで、1年ぶりの場所に懐かしい気持ちになった。


会場にはロリータファッションをした女の子達が続々と集まっていて、海外の女の子達もたくさんいる。


ロリータファッションは今や世界で認められているファッションなんだと改めて思う。


そして今日はなんとテレビの撮影も入っている。


「それではモデルの皆さんによるファッションショーをお楽しみください」


司会の言葉と同時に、扉が開かれた。


皇月先輩、凛ちゃん、わたし、Sweet Girls専属モデルさん数名の順番でショーが始まる。


トップバッターで登場した皇月先輩の姿に、会場内は大歓声。


やっぱり超人気モデルなんだなぁって思う。


続いて現れた凛ちゃんにもみんな大興奮で歓声があがっている。


そしていよいよわたしの出番。


今日はいつもより少し大人っぽいクラシカルロリータ風の衣装で、襟がセーラー服になっている星座盤柄のジャンパースカートを着ている。


「音夢ちゃん可愛い~」


どこからかそんな声が聞こえて視線を向けると、日菜子ちゃんだった。


薄い緑を基調にしたローズ柄のジャンパースカートにオフホワイトのレースのボレロというお嬢様っぽいクラシカルロリータ風衣装がよく似合っている。


わたしも会場からたくさんの歓声と拍手をもらって、無事に出番が終わった。


その後は参加者に事前に募った出演モデルへの質問コーナーに入った。


「お休みの日は何をしてますか?」とか、「最近のマイブームはなんですか?」という他愛ない質問のあと。


「さあ、続いての質問です。“七星くんに質問です。ぶっちゃけ凛ちゃんか音夢ちゃんとつきあってますか?」


という衝撃的な質問が司会者から読みあげられた。


会場内から歓声の様な悲鳴のような声があがる。


っていうか、こんな質問選んじゃっていいの?


普通、事前に事務所のスタッフさんやマネージャーさんがチェックしてるものじゃないの?


内心焦ってパニックになっているわたしとは対照的に、


「…ということですが、七星くん、どうなんですか?」


マイクを向けられた皇月先輩は、特に動揺している様子もなく、


「ぶっちゃけていいなら、音夢とつきあってますよ」


と、隣に立っていたわたしの肩を軽く抱き寄せて答えた。


その瞬間、今までで一番大きな歓声があがって、テレビや雑誌の取材陣からたくさんのフラッシュを浴びた。


☆☆☆


「すごい、もうネットニュースに上がってる」


数時間後、無事に?お茶会を終えて打ち上げで行ったレストランにて。


凛ちゃんがスマホを見ながらつぶやいた。


「ほら」と見せてもらったサイトには、“人気モデルの皇月七星、新人モデルとの交際認める”というタイトルで、さっきのことがもうニュース記事になっていた。


「サプライズ大成功だね」


いたずらっ子みたいに笑った凛ちゃんを見て、もしかしてというあるひとつのことが心に浮かぶ。


「あの質問入れたのって、凛ちゃん?」


「あたり~!これで堂々と七星くんとつきあえるね」


「そうだな」


「皇月先輩!?」


突然聞こえてきた声に振り向くと、皇月先輩が立っていた。


「もしかして、皇月先輩も知ってたんですか?」


「…ああ」


だからあの時平然としていたんだ。


「でも…いいんですか?わたしなんかとつき合ってるなんてあんな堂々と言っちゃって」


すでにネットニュースには、新人モデルの売名行為じゃないかとか、どうせすぐ別れるのにとか誹謗中傷的なコメントも書きこまれている。


「“わたしなんか”って言わないでもっと自信持てよ。おまえは俺だけのお姫様なんだから」


「……!」


な、な、なんてことを言い出すんだ、皇月先輩…!


皇月先輩ってこんな甘いこと言う人だった?


「先輩ってそんなこと言う人でした?」


恥ずかしさのあまり思わずそう聞くと、


「美夢の前でしか言わない」


なんて、またまた信じられないことを言われて。


「あ~空気甘すぎ。あとはふたりでお好きにどうぞ」


凛ちゃんがそう言って席を移動した。


「美夢、顔赤い」


「せ、先輩のせいです!」


わざとらしく顔を覗きこまれて、慌てて視線を逸らして答えると、先輩はおかしそうに笑った。


☆☆ ☆


お茶会の翌日から、予想通り皇月先輩の交際宣言はテレビやネットニュースで話題になり、わたしも学校で注目の的になった。


ダンスパーティーの時に彼女だと言われていたから、わたしが皇月先輩とつきあっていること自体はそれほど驚かれていない。


むしろ、「あんな風に堂々と言ってくれる彼氏なんて羨ましい」「これからもお幸せにね!」という好意的な言葉をくれる人達が多くて驚いた。


事務所も、わたしと皇月先輩の交際は公認してくれている。


そして皇月先輩の交際宣言はわたしの心配とは逆にファンの間では好印象だったようで。


なんとお茶会の時に取材に来ていたテレビ局のバラエティ番組に、話題のモデルカップルとして出演することが決定したんだ。


初めてのテレビ出演で、収録直前スタジオの袖で緊張してガチガチになっていると。


「大丈夫。俺もいるから」


皇月先輩がそう言って、わたしの手をそっとつないでくれた。


その瞬間、今までの緊張がうそみたいにふっと解けた。


先輩の言葉は、初めて会った時からずっとわたしを支えてくれている。


まるでシンデレラにかけられた魔法みたいにわたしを変えてくれる。


“わたしなんかって言うなよ”


初めて会った時に言われた言葉を思い出しながら、瞳を閉じて深呼吸する。


大丈夫、わたしにもできる。


心の中でそう唱えて。


「――それでは登場して頂きましょう、人気モデルの皇月七星くんと、音夢ちゃんです」


先輩と手をつないで、笑顔でスタジオへ向かった。