春休みが終わり、新学期。
わたしは中学2年生になった。
気になるクラス替えは如月さんとは別のクラスになった。
そして、去年と違うのは……。
「美夢ちゃん、お昼一緒に食べよう!」
「うん」
わたしに友達ができたこと。
新学期初日、緊張していたわたしに「音夢ちゃんのファンなの!同じクラスになれて嬉しい」と声をかけてくれた日菜子ちゃん。
ゆるふわウェーブのかかったロングヘアに、綺麗に手入れされたネイル。
派手すぎないナチュラルメイクが上手なキレイ系女子。
去年だったら絶対にわたしとは関わりのないタイプの子だと思う。
でも、今は音夢としてモデル活動していることをみんな知っているから、地味子とバカにする人はほとんどいない。
「今度の撮影はいつなの?」
「来週の土曜日だよ」
「そっか~頑張ってね!」
「うん。ありがとう」
日菜子ちゃんは、イヤミを言ったり意地悪をしたりせず、素直にわたしのことを応援してくれているみたい。
最初は皇月先輩や凛ちゃん目当てで仲良くなろうとしているのかな、なんて思ったけど、本当にわたしのファンでいてくれてるんじゃないかって思い始めてる。
そして、日菜子ちゃんと仲良くなったことをきっかけに、クラスの子達とも自然と話せるようになった。
去年はクラスの中でいつもひとりでバカにされてばかりだったから、なんだかまだ信じられないけど、クラスに馴染めていることがとても嬉しい。
☆ ☆ ☆
そして訪れた撮影当日は、春らしい淡い水色の空が広がる気持のいい天気になった。
今日はいつもの撮影スタジオじゃなくて、初めて凛ちゃんとふたりでロケ撮影をすることになっている。
場所は都内から約一時間の場所にあるハーブ園。
美雲さんに運転してもらって着いた場所は、とても静かで空気のおいしい場所だった。
今日は特別に貸し切りにしてもらっているらしく、一般のお客さんはいない。
「すごい、まるで外国映画に出てくる庭園みたい!」
「緑のアーチかわいい!」
撮影場所に着いたとたん、凛ちゃんとはしゃいでしまった。
広い庭の中に、まるで映画や童話の世界に出てきそうな緑のアーチに囲まれた木のベンチがあって、そこで撮影をすることになっている。
「それじゃ、ふたりともスタンバイお願いします」
スタッフさんに声をかけられて、凛ちゃんと一緒にベンチの前に立つ。
今日の衣装は庭園にちなんで、お花畑にウサギとリスが描かれたワンピース。
わたしはピンク、凛ちゃんは水色を基調にしたお揃いの衣装だ。
「あ、蝶々だ」
ふたりで撮影をしていたら、ふわふわとわたしたちのもとにモンシロチョウが飛んできた。
「お、すごいシャッターチャンス!」
カメラマンさんがそう言って撮影した写真を見ると、まるで演出したかのようにいい写真が撮れていた。
その後も庭園を周りながら撮影をして、撮影を終えた時にはお昼の時間を過ぎていた。
「今日は貸し切りにしてもらってるから、カフェでお茶できるわよ」
美雲さんに言われて、わたしと凛ちゃんは早速カフェに向かった。
「すごい、色んな種類のハーブティーがある」
「カモミールアイスもある。美味しいのかな」
メニューを見ながら凛ちゃんとふたりで盛り上がった。
今日は皇月先輩がいないから、完全に学校の友達のノリではしゃいでる。
わたしと凛ちゃんは、色々悩んでカモミールアイスを注文した。
「さっぱりしてて美味しい!」
「ホントにカモミールの香りがする!」
注文したアイスを口に入れた瞬間、ふたりで感動。
初めて食べたカモミールアイスは、さっぱりしていて香りも良くて、想像していたよりもずっと美味しかった。
「そういえば音夢ちゃんって七星くんとデートしたことあるの?」
そう言われてみると、まだふたりきりでどこかに出かけたことってない。
いつも撮影でしか会わないし、今は学校も高校と大学で離れてしまったし。
でも、ふたりきりでどこかに行ったとしても、人が多いところでは皇月先輩は絶対に気づかれて騒ぎになっちゃうだろうし。
「ないけど、ふたりで出かけたら色々騒ぎになりそうだから」
スキャンダルになったりしたら皇月先輩に迷惑をかけてしまう。
だから、今は撮影の時に会えるだけでも充分だ。
「まあ確かにそうだけど、今はオープンにしてる人達も多いよね。いっそのこと堂々と交際宣言しちゃえばいいのに」
「ええ!?」
凛ちゃんの言葉に思わず大きな声を出してしまって、慌てて周りのスタッフさんに謝る。
交際宣言なんて、そんなことしたら皇月先輩のファンが絶対怒るよ。
「もちろんみんな受け入れてくれるわけじゃないとは思うけど。わたしは音夢ちゃんなら七星くんとお似合いだと思うし、自信持っていいと思うけどな」
「……ありがとう」
凛ちゃんにそう言ってもらえるだけで、すごく嬉しいな。
いつかもっと自分に自信が持てるようになったら、凛ちゃんが言う通り、堂々と宣言できる日がきたらいいな。



