恋は手のひらの上で

笑いながら私の目の前に立つ。
身長だけなら、たぶん、椎名さんとそう変わらない。
でも高橋の方が大きく見えるのは、肩幅とか、筋肉質な体型のせいだと思う。

彼の視線が、私の後ろを一瞬だけ追う。

エントランスの向こう。 今さっき出ていった、スーツ姿の背中の方向。椎名さんだ。

ほんの一瞬。

「へぇ。さっき一緒に来た人が今回の担当者?」

軽い声。
でも、少しだけ早い。
ちゃんと見ていたことが、なにやら胸をざわつかせる。

「…そうだけど」

「ずいぶんと若くない?」

「……まあ」

「イメージと違ったな。もっと年上かと思ってた」

言いながら、高橋は自分のネクタイに触れる。
無意識みたいに。
結び目を指で持ち上げる。

きゅっと締めるかと思って、やめる。整えない。

そのまま、私をまっすぐ見た。

「ちゃんとやれてんの?」

冗談っぽい口調で笑う。
でも目は、少しだけ真剣だった。

私はバッグを持ち直す。

「心配しなくても、やれてるよ」

「西野のことだから、丸め込まれてるんじゃないかって思ってさぁ」

「そんなこと、絶対ないから」

「ふぅん」

その相槌が、わずかに硬い。