恋は手のひらの上で

会議はそのまま次の議題へ進んだ。

数字は一旦、保留となったが、私の中ではまったく保留になっていない。


二千八百円と、三千円。
その差は、二百円じゃない。

自分がどこに立つかの差だ。

私には、まだ言えなかった。



••┈┈┈┈••

会議が終わり、資料をまとめる音が重なる。
椅子が引かれ、挨拶が交わされ、空気がゆるんでいく。


朝倉課長は時計を確認し、「次の打ち合わせがあるから」と先に立った。

「西野さん、申し訳ないけど、あとよろしくね」

軽く肩を叩かれ、私は反射的に「はい」とうなずく。


黒田さんと久我さんも部屋を出ていき、鈴木さんはパソコンを抱えながら椎名さんに何か確認している。

「鈴木くん、先にデータ整理しておいてくれる?あとで見に行くから」

「はい」

鈴木さんが出ていき、バタンと音を立てて扉が閉まった。
途端に室内が静かになり、広かったはずの会議室が、急に空洞みたいに感じる。

私はというと、まだノートパソコンの画面をずっと見つめていた。