恋は手のひらの上で

久我さんがすぐにノートにペンを走らせる。
そして彼女は視線をノートに向けたまま、少し声を張り上げた。

「UGC施策についてですが、トライアルサイズの訴求ポイントはどのように設計されていますか?」

想定内の質問だったので、私はスライドのグラフを指でなぞりながら説明する。

「初回購入者が共感しやすい文章構成をA/Bテストで確認する予定です」

「広告クリエイティブにおけるA/Bテストの期間は?」

「二週間の短期テストで、CTRとレビュー誘導率を確認しようかと。最終的な文言と配色を確定します」

黒田さんが渋い顔のまま軽くうなずく。

ふと椎名さんを見やると、彼は隣にいる鈴木さんのデータ入力を見守っている様子だった。

その淡い横顔は、実質より距離が遠い。
…なんて、今は考えている余裕なんてない。

「配色も、心理的にリラックス感のあるトーンを使用します。UX観点から、レビュー投稿までの動線も短く設計するつもりです」

平常心を心がけながらも、資料の角を押さえる手がわずかに震える。
それでも言葉は続けた。

「最終決定は二週間から三週間と見ています」

朝倉課長が隣でなにかをメモする音がした。
静かな室内に響く、ペンやキーボードの音。ここにしかない薄い空気だ。