恋は手のひらの上で

『件名:先日の御礼/確認事項の共有

西野様

先日はお時間をいただき、誠にありがとうございました。

ご提案資料につきまして、社内にて共有・検討いたしました。
検討の中で一点確認事項がございます。

継続率65%想定についてですが、初回ロット増加時の在庫回転リスクを鑑み、想定数量レンジを改めてご教示いただくことは可能でしょうか。

また、テスト配信開始時のスケジュール感および概算CPAレンジについても、現時点での想定がございましたら共有いただけますと幸いです。

急ぎではございません。
ご確認の上、ご都合のよろしいタイミングでご返信ください。
引き続きよろしくお願いいたします。

椎名』


思わず、息を止めていたことに気づく。
呼吸しなさい、私。

ただ、初顔合わせの日に開始三分で指摘された時の自分は、明らかに慌てていた。
資料をめくる指が、パソコンやタブレットを操作する手が、どれだけ落ち着かなかったか。


それでも急かすことなく、圧もなく、ちゃんと私の作った資料を読んで、持ち帰って、こうして朝早くにメールをくれる。

あの人は、あの時も、今も、同じ調子だ。

冷静で、無駄がなくて、でも雑ではない。
ちゃんと見ている。

─────仕事として、だ。
そう、仕事として。