恋は手のひらの上で

「今日もエレベーター前で待ってたじゃん」

「偶然だって」

「うそだね。あれは待ってた」

麻耶は即答。本当に見ていたようだ。


高橋は、たしかに分かりやすい。
距離が近い。言葉も近い。

あの人は、私のことを分かっている顔をする。

「別に、嫌じゃないんでしょ?」

紗英が静かに、でも確かめるように聞いてきた。
ただ、すぐにうなずくことはできなかった。

嫌じゃない。それは本当だ。

だけど、“好き”のそれとは違う。
自分から近づきたいとか、そういう気持ちはない。
つまり、これは愛ではなく、友情だ。

「好きって言われてないし」

「言われなくても分かるじゃん」

─────分かる。
だからこそ、曖昧なままにしているのかもしれない。

「芽依がその気になれば、明日にでも付き合えるよ」

軽い冗談みたいに言われてしまった。

「ぜーーったい平和だよ」と麻耶が続けた。
「愛されまくる未来が見えるもん。すっごい分かりやすいもん、高橋」

「すーぐプロポーズしてきそう!」

二人とも笑っていたけれど、私は笑えなかった。