恋は手のひらの上で

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金曜の夜は、だいたい反省会だ。
仕事の、というより、自分の。

会社の近くのバルは、金曜だけ少し浮かれている。
照明がやわらかくて、テーブルがやけに近い。

ヒールのせいで足がむくんでいるのに、それを脱ぐ勇気はない。


部署は違えど、いつも励まし合って頑張ってきた同期の紗英(さえ)と麻耶(まや)がお待ちかねといった様子で私を出迎えてくれた。

私は結局残業になってしまい、少し遅れて合流した。

「お疲れ様ー!」

グラスがぶつかる音で、ようやく肩の力が抜ける。

「…で? 今日の大手どうだったの?」

─────すぐ来た。

目をキラキラさせて、この話をしたかったのだろうなとすぐに分かる紗英。

私はほとんど反射で答える。

「アンチポリューション市場は、今後も発展していくとして…」

「違う違う!」

紗英が大げさに手を振る。

「人!仕事も聞きたいけど、まずは人!」

隣で麻耶も楽しそうに笑っている。

「担当者、どんな人だった?東央ヘルスケア!超大手じゃん!期待大!」


何に期待をしているのか。
“どんな人”。そう聞かれても。

グラスを傾けてワインを一口飲み、時間を稼ぐ。

「あっちは三人いたよ。メインの人は、二十代か、三十代くらいの人で、あと、若い女の子と明らかにベテランて感じの男の人」

「担当者は女の人?どんな感じ?」
「二十代か三十代ってどっちよ!」

「ふたり同時にしゃべらないで」

とにかく知りたくてたまらないといった様子の紗英と麻耶は、きょとんと顔を見合わせる。

「芽依がこれから二人三脚で頑張っていく大手企業の担当者。大事なことだよねぇ」

ねー、と同意見。