恋は手のひらの上で

私も良くない。高橋を試した。

高橋の目はまっすぐだ。私をふと見て、にやりとした。

「俺はいつものぺたんこ西野がいいな」

「だから、言い方…」

半分呆れた。
森下くんといい、言い方をどうにかできないのか。


私はやつの手から資料を引き抜くと、ノートパソコンを開いた。

「まだやるの?」

高橋にそう言われたが、時計は十七時半。
まだ定時まであと三十分ある。
真面目に仕事をしようとしているというのに。

当たり前でしょ、と返すと、高橋がさらりと誘う。

「今日、ふたりでご飯行かない?」

…またか。

「やめとく」

「何回誘えば来るんだよ」

「みんなとなら行くよ」

「なんでふたりだと来ないの?」

笑っているけど、目は少しだけ本気。
私は立ち上がったパソコンの画面を見つめたまま、その質問には答えない。

私の机に乗せられていた手のひらが、静かに視界から消える。

背後に立つ高橋の気配は、あたたかい。けれど、受け入れる気持ちはない。ただの同期としての安心。

「じゃあ、また誘うから次は来てよ」

高橋がそばから離れるのが分かり、ちょっとほっとする。


ぺたんこでいいと言う人と、背伸びも悪くないと言う人。 私はどっちの言葉に、少しだけ救われたんだろう。