また婚約しよ?

俺はキャーキャーうるさい女子共を適当にあしらいながら構ってほしそうにこっちを見ている心愛に目を向ける。

何だあいつ。こっち見てきて。まじでウケるわ。

ぜ〜んぶ勝手に勘違いして騒いでたあいつが悪い。
俺は被害者だ。俺かわいそ。

俺はそんなに優しい人間じゃない。
むしろ人と関わるのなんて大の苦手。

―そんな俺でも唯一嫌な気分にならず話すことができるのはあいつ…心愛だけだった。

何で俺を避けるようになったんだよっ、いや、見送りの時間に遅れたからだろう。
でもあれはしょうがないだろっ!
心愛へのプレゼントを探し回っていたんだから。

色々な店を回り、洋服、キーホルダー、人形。

あれも違う。これも違う。
もっと、もっと心愛が喜びそうなやつは…!

っ…!
これだ。
俺はある店の前で足を止めた。

―それはペンダントだった。
これをつけて心愛が笑っている光景が自然と頭に浮かんでくる。

「これくださいっ!」

俺はすぐさまそれを購入した。

店を出て、ふと時計に目をやった瞬間、俺は膝から崩れ落ちた。

―10時…45分―

出発は10時20分らしい。
多少待っていてくれたとしても、ここの店から心愛の家はかなり遠い。

それも考えて時間に余裕を持って家を出たはずだ…。
間に合わない。 

今頃心愛は薄茶色の髪をツインテールにして寂しそうに車の窓を見つめているかもしれない。

当時俺も心愛もスマートフォンを持っていなかった。
連絡もできない。
見送りもできない。

でも、今となっては気にも留めていない。
ど〜でもいい。心愛なんて。