《城川琴音様でも、橘有紀様でも、どちらでも構いません。ブース中央のクローシュをお開けください。》
ブースに入って扉が閉めると、アナウンスがされる。
有紀がおびえたように一歩後ずさったので、私は正方形の白いテーブルにかぶせられた銀色のふたを開けた。
白い包み紙に包まれた飴が4つ整列していて、左から『自分が失格になる飴』『何も起こらない飴』『2人が失格になる飴』『相手が失格になる飴』だ。
飴の種類が見えるということは、私が選択者ということだろう。
「琴音、お願い、たすけて」
テーブルにクローシュを置こうとしたところで、有紀が私の肩をつかんで縋り付くような目を向けてきた。
手汗でクローシュが滑り落ち、床とぶつかって甲高い金属音を奏でる。
《残り時間は3分です。選択者の方は飴を選択してください。》
「残り時間あるの?ねえ、琴音が選択者なんだから、助けてよ」
馬鹿の一つ覚えのように『助けて』を繰り返す有紀が、狂ったように飴をひっつかむ。
「待って有紀!」
よりにもよって有紀が掴んだのは、一番安全であろう『何も起こらない飴』だ。
「離して!」
「いや!これ、あたしが失格になる飴でしょ‼」
有紀の手を掴んで無理やり開かせようとしたが、私ごときの力じゃどうしようもなかった。バスケ部の彼女に、帰宅部の私が力勝負で勝てるわけがない。
私は深く息を吸い、『相手が失格になる飴』を口に入れた。
「琴音、あんた、最っ低」
何度かせき込みながらもそう言い放った有紀が、私の頬を強く打つ。その拍子に、有紀が握っていた『何も起こらない飴』が落ちる。
「偽善者学級委員が」
恨みごとのようにそう言い残し、有紀がその場に倒れる。
床に放置されていたクローシュがぬらりと嫌な輝きを放った。



