Candy Game


田中(たなか)っち、遅くない?」

「それな。いっつも早いのに」

わたし――島原(しまはら)このみは、友達の佐川翠(さがわみどり)といつも通りくだらない会話を繰り広げている。

「てか、もう55分じゃん。なんかあったんかな」

現代文の教科担任である田中先生を待っていると、がらりと教室前方の扉が開いた。

《聖アイリス高等学校2年3組の皆さん、おはようございます。ただいまから重要な連絡がありますので、体育館にお越しください》

人間味のない、自動読み上げ音声のようにそう言い放ったのは黒いスーツに、狐の仮面をかぶった人だった。

「体育館…?は?ウチら、1時間目現代文なんですけど」

校則違反の明るい茶色に髪を染めた西園寺花蘭が、貧乏ゆすりをしながら苛立たしげにそう言い放つ。

「どういうこと?」「さあ…」「重要な連絡って…怖くない?」

わたしの背後で、『1軍』以外の生徒がざわつき始める。

隣にいる翠はおびえたように俯いている。

《みなさん、お急ぎください。10分以内に体育館にお越しいただかなかった場合、『失格』になってしまいますので》

狐面の人がそれだけ言い残して、教室から出ていく。

「やばいって。あたしたち、なんかしちゃったのかな」

「てか『失格』ってなんなの?デスゲームみたいに、死ぬ的な?」

「怖いこと言わないでよ」

生徒たちのざわめきを一刀両断するかのように、学級委員である城川琴音(しろかわことね)が立ち上がって声を飛ばす。

「『失格』になったらどうなるかはわかんないけど、たぶんなんかよくないことが起きると思う。おとなしく体育館に行こう」

「そんなこと言ったって、あんなん不審者じゃん。職員室行こうよ」

城川琴音の横に座っていた橘有紀(たちばなゆうき)が、短い黒髪を揺らしながら反論する。

「有紀ちゃん、気持ちはわかるけど10分以内に行かないと『失格』だよ。おとなしく行こ」

橘有紀の友人である宇崎曄(うざきはな)が、彼女の腕を軽く叩きながらそう説得する。

「私は行くから」

城川琴音が律儀なポニーテールを揺らしながら教室を出ていく。

その動きに誘発されたかのように、クラスメイト達が教室を出て体育館に向かったので、わたしも翠の腕を引いて教室を出た。