「有名だよ。このあたりじゃ、君の泣きはらした顔はね。最もさっき知った情報だけどね」
猫は前足で顔を洗いながら、事もなげに言った。麻美子は呆れながらも、悲惨な境遇にいる自分を自嘲するように、皮肉を投げ返した。
「そう。なら、不幸のどん底にいる私に、何か慰めの言葉でもくれるのかしら」
「慰め? そんなもの、お腹の足しにもならないよ」
猫は麻美子の高級なコートを値踏みするように見上げた。
「君は立派な皮を被っているけど、中身はボロボロだね。僕を見てごらん。私には洋服なんて一枚もない。でも、この日差しに輝く素晴らしい毛並みがある。それだけで、今日の僕は王様より贅沢なんだ」
「……毛並みだけで幸せになれるなら、苦労しないわよ」
「なれるさ。君がその、脱ぎ捨てたいような自分を愛してやればね」
猫はそれだけ言うと、欠伸(あくび)をして茂みの奥へと消えていった。
公園を後にし、一軒の駄菓子屋の前を通りかかった。
そこの店先につるされたカゴの中では、一羽の鮮やかな小鳥が鳴いている。
カゴの枠の金網を飛んでは止まり、飛んでは止まりと繰り返していた。
最初は心地よく聞こえていた、その鳴き声は、次第に生意気な女の言葉のように聞こえ始めた。
「私は贅沢よ。ここにいれば外敵に襲われはしないし。食事だっていただけるわ」
猫は前足で顔を洗いながら、事もなげに言った。麻美子は呆れながらも、悲惨な境遇にいる自分を自嘲するように、皮肉を投げ返した。
「そう。なら、不幸のどん底にいる私に、何か慰めの言葉でもくれるのかしら」
「慰め? そんなもの、お腹の足しにもならないよ」
猫は麻美子の高級なコートを値踏みするように見上げた。
「君は立派な皮を被っているけど、中身はボロボロだね。僕を見てごらん。私には洋服なんて一枚もない。でも、この日差しに輝く素晴らしい毛並みがある。それだけで、今日の僕は王様より贅沢なんだ」
「……毛並みだけで幸せになれるなら、苦労しないわよ」
「なれるさ。君がその、脱ぎ捨てたいような自分を愛してやればね」
猫はそれだけ言うと、欠伸(あくび)をして茂みの奥へと消えていった。
公園を後にし、一軒の駄菓子屋の前を通りかかった。
そこの店先につるされたカゴの中では、一羽の鮮やかな小鳥が鳴いている。
カゴの枠の金網を飛んでは止まり、飛んでは止まりと繰り返していた。
最初は心地よく聞こえていた、その鳴き声は、次第に生意気な女の言葉のように聞こえ始めた。
「私は贅沢よ。ここにいれば外敵に襲われはしないし。食事だっていただけるわ」



