銀杏並木の毒舌な隣人たち

 失恋をした麻美子は、なぜ自分に幸せが訪れないのか気になっていた。
 ベージュのコートに、裾がフレアになったタイトなパンツ。
 このスタイルが彼女のお気に入りだった。

 ボーナスで購入した、外国製の少し値が張る物だった。
 楽しんでいる。言葉ではそう表現するのだろうが、果たして本当にそうなのか、疑問に思った。
 秋の昼下がり。田園調布駅近くの銀杏並木を歩き、宝来公園に足を向けた。

 そこには水草が生い茂った池がある。
 そこでも眺め、人生でも見つめ直そうなどと考えていた。
 池のすぐ側。石で出来たベンチに腰をかけると、声を出しながら、猫が近づいてきた。

「にゃ。にゃ。にゃ。にゃ」

 声を上げながら、トンっと私の座る石のベンチに飛び乗った。

 しばらくお互い、何の干渉もなく池を眺めていたが、平然と猫が話しかけてきた。

「麻美子。フラれたんだね」

 野太い声で、猫に話しかけられている。それもデリカシーのない言葉を持ちかけられた。
 麻美子は驚くことなく。腹立たしさも忘れて呆然とした気分だった。

(なんて生意気な猫なんでしょう。いいわ。猫に付き合ってあげる)

「あなた私のこと知っているの?」

 猫はニヤと笑い。ギョロッ目を向けた。