過つは彼の性、許すは我の心 肆



 文啓兄さんが息を詰めるのを気配で感じた。


「生かすのか、失うのか」


 身体が震える。

 人の命を弄んだ僕への罰か。

 何故僕に、僕なんかに…。

 気が触れそうになるが、決めなければならない。

 宿った命(・・・・)の為に僕がすべき事はーーー…。


「紅葉」


 硬い表情の兄さんの声に視線を上げる。

 緊張と信じられなさを混ぜた兄さんの顔。

 兄さんは残酷な事実を。

 言葉として、


「お前ーーー」


 現実に、


「ーーー妊娠しているのか」


 顕現させた。

 匡獅が居ない現実に慣れる前に、避け様のない真実が僕を…私を襲った。